新年度の感染症対策、概要を伝える(2025/2/24)
●考え方の根本
- 感染症には不顕性感染(感染しても症状が出ない、軽い)が多い。また、新型コロナ、感染性紅斑(リンゴ病)、手足口病等は、症状が出る前に(も)感染力がある。だから、「症状がある子どもは休んで」「診断がついた子どもは休んで」という言い方は理不尽(=発症した子ども、受診して診断してもらった子どもに対する罰ゲーム)。
- 体温だけで決めないで! 平熱が高い子どもが不利益を被るだけでなく、平熱で起こる異常を見逃すリスクがあるから。
- ほぼすべて対症療法しかない以上、地域で流行しており、重篤化しそうにないなら、医者が検査をしないのは当然=「風邪」「おなかの風邪」 。「検査をしてきて」と園が言うのは越権行為。検査キットは有限かつ高価な医療資源。検査すると決めるのは医師のみ。
- 園では、まず定期的な換気。おとなは、必要に応じてマスク。加湿は空気中の水分子を増やすことで浮遊ウイルスを落とすことを目的にしているが、過度な加湿はカビのもと(加湿器の中でもカビやカビを栄養にする細菌が増殖)。

主な呼吸器感染症とノロウイルス感染症の特徴、潜伏期間等 →
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●保護者に伝える(B‐1。B‐2のこの前後のひな型も)
- 集団感染の責任を園が問われることは、ほぼない(調理室職員が排菌している場合、食材から検出された場合は別の話)。通常以上の対策、対応はできない、しない(と保護者にも言っておく)。「何もかもアルコール消毒」? そんな方法は、「感染症対策ガイドライン」にも「大量調理施設衛生管理マニュアル」にも書いてありません。なぜ、国のマニュアル以上のことを「正しい」「必要」と考えるのですか?
- 「迎えにきて/受診して/休んで」と依頼したとして、帰宅した保護者は園以上のケアを子どもにできる/するのか? 「保護者ができないから、園がしろ」と言っているわけではない。園も配置が少なすぎ、職員の経済的/時間的余裕はない。それでも、「帰った子どもがケアされるのか?」という問いは、子どもの福祉に照らして、持つべき。
「仕事が終わらない」「お金が稼げない」という保護者の精神状態だけでも子どもにとって悪影響かもしれない。経済上、仕事上、休むことができない現状を作っているのは社会/職場。
- そもそも「迎えに来て」と言うことは逆効果であり、園と保護者の関係を悪化させる。「迎えに来て」と言えば言うほど、保護者は園からの電話やメールをいやがるようになる(出なくなる、見なくなる)。「迎えに来て」とうるさく言われるから(行けるけど)行かないという感情にもつながり、「行けません!」という反応にもつながる。
- 「自分で選ぶ」がもっとも大事(=人間は2歳以降はイヤイヤ期)。選べるから、自分で考える。そして、選んだことにはそれなりに責任を持つ。選ばせずに行動を押しつけると、不快感や怒りを抱き、考えなくなり、行動しなくなり、責任も持たなくなる。
- これまで「迎えに来て」と言い続けてきたなら、この機会に「お子さんの体調をこまめに伝えますが、お迎えをお願いしているわけではありません」とはっきり伝える。
- 電話で保護者が「どうすればいい?」と聞いてきたら、「どうなさりたいですか? 『迎えに来てと言われた』という理由があればお仕事から出てきやすいようでしたら、迎えに来てくださいと言います」。
あるいは、その日の最初の連絡の時点で「迎えに来てと言ったほうがよければ、そう言ってください」と。そこで「(迎えに来てと言ってくれて)よかった」と保護者が感じるなら、園との関係にもプラスになる。

更新 今の時期の掲示:「お迎え要請ではない」と伝えましょう→
汚れた衣服の扱い等は「旧FB」のこちらとB-2のひな型で。
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通年の休み状況掲示板:玄関等に掲示。各クラスのドアにクラスのぶんだけ掲示したのでは、全体像が伝わらない
- 「呼吸器+熱」は「呼吸器」、「胃腸+熱」は「胃腸」。予防に必要なのは感染経路であり、病名ではない。熱は症状のひとつにすぎず、感染経路でもない。
- RSかコロナかインフルエンザか…はわからないことが多く、分ける必要もない。ただし、検査をしてくる人はいるので、それは一番下に症状とは別に(インフルエンザ2人)(コロナ1人)等と書いては?
- 調理室は「胃腸症状による休み」が重要なので別途表示。ただし、調理室だけを槍玉にあげているようにも見えるので、事務室も。あるいは症状で分けず、「職員の休み」にまとめる。

●資料
- 感染症の流行状況は、NHKのサイト(感染症別、都道府県別)
- 「手洗いの後に消毒は不要」「換気をして」「空間噴霧をしないで」等はこちら(厚労省)。熱湯による消毒も選択肢
- 正しい手洗い法(厚労省)
- 正しい手指消毒(厚労省):アルコールを振りかけただけでは消毒にはならない。子どもにはできず、吸い込んだりなめたりする危険も
- 新型コロナの感染経路の図はこちら(2021年、権威あるLancet誌に掲載ものを翻訳)。この図も含め、コロナ関係の翻訳や厚労省の「Q&A」はこちら
- 次亜塩素酸ナトリウムによる「消毒」は、ノロ等の感染性胃腸炎用+トイレ等のみ。2019年までと変更なし。ノロやロタにアルコールは効果なし。厚労省の感染症ガイドラインや嘔吐・下痢時の対応は「役立つリンク」のこちらにまとめて
- 「除菌」は表面から物理的にウイルスや菌を「除く」方法であり、「清潔な布を水道水で洗って絞ったもので拭く」は十分な除菌。「除菌」にこれ以上の定義はない
- 「殺菌」に具体的な定義はない。「殺菌庫を使っているから大丈夫」は油断のもと
- おとなは正しい方法による手指消毒もできるが、その成分は本当に消毒効果が期待できるものか?(例:「肌にやさしい除菌剤」は消毒薬ではないのだから、定義上、アルコール同等の消毒効果はない)
- 「99%除菌」「99%の効果」にだまされない! 真に科学的な検証をしているなら「99%」にはならないはずで、この「1%」は「効果がなかった」と言われた時の言い逃れ用にすぎない。「99%」と言っている段階で眉唾。
- 2021年の春には、「新型コロナウイルス感染症は飛沫/空気感染するもので、物の表面を介した感染(※)はしない」が世界の専門家の一致した意見だった(上のLancetの記事)。WHO(世界保健機関)は2021年12月23日、「離れていても空気を介して感染する」という言葉を感染経路の解説に入れた。国立感染症研究所は2022年3月28日、新型コロナウイルスの「エアロゾル(空気)感染」を認めた。 ※いわゆる「接触感染」。物の表面にあるウイルスが手指に付き、それが粘膜や口等を介して感染する経路。手指から直接、体内に入るわけではない
- 下は、WHOが2022年に出したポスター

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