C-1. 自分の脳とコミュニケーション。他人とコミュニケーション(特に園内)
(2024/10/10)



自分の脳とコミュニケーションする「声出し指さし」

 「指をさして言葉で言う」=自分の脳とコミュニケーションする方法です。指をささなければ目はそっぽを見、言葉で言わなければ脳は別のことを考えているから(詳しく+具体例は、2-3YouTubeの9)。

1)メールや連絡帳を送信する時は、送信ボタンを押す前に送信先を指さして「〇〇さんと、△△さんに、~のメールを送ります」と言いましょう。その時、「〇〇さんと△△さんと□□さん…」のようにぱぱぱぱ~っと読むのではなく、「〇〇さん(指さして見る)」「△△さん(指さして見る)」「□□さん(指さして見る)」のようにします。ぱぱぱぱ~っと読むと間に誰か別の人が入っていても目に入りません。多少、名前が違っていても気づき損ねます。
(オマケ:誰かから誤送信と見られるメールが来ても、そのメールに返信してはいけません。なりすましかもしれないので。必要ならその園/人に電話等、そのメールに返信する以外の方法で連絡してください。)

2)おたよりやメールの文章で誤字脱字を見つける、食品の原材料一覧を確認する…、どうしても自分一人でしなければならない時があります。そんな時の方法は下の通り。校正作業をする人にとっては基本のき(←元・編集者)ですが、とにかく、いかに「文章としてざ~っと読んでしまわないようにするか」です。
 もちろん、これで誤字脱字や間違いを完璧ゼロにできるわけではありません。そもそも皆さんは編集者ではないのですから、誤字脱字もあって当然。ですから、致命的な誤り、たとえば年月日と曜日、人名などの固有名詞、電話番号の誤りだけは絶対に見つける!というメリハリを。また、食事のメニュー確認は読み飛ばしのリスクが大きいので、できる限り2人で読み合わせ。メールもおたよりも早めに書いて翌日や翌々日に読み返すようにしましょう(直後に読むよりも気づきやすい)。連絡帳は翌日まで待てませんから、他の人にチラッとでも読んでもらってください。




「すること」を管理する+自分を動機づける

 これも自分の脳とのやりとりです。
 「子どもがケガをした!」「保護者の〇〇さんから電話が来た!」など割り込んでくることが多い現場で、しなければならない作業を進めるのは至難の業です。いつの間にか忘れていたり、やる気がなくなったり…。どうするか?

 作業を小分けにして、進んでいる様子が自分に見えるようにする!
 (これをクラス単位、園単位にしたのが、C-3の「工程表」です。)

1)たとえば、大きいフセン(四角や長方形のもの)を使って下のようにします。書類を作る時なども同じ。あなたがおたよりを書く係なら、「下書きを書く」「園長に見せる」「誤字脱字を探す」のように分けることもできます。重要なのは、ひとつずつ切り離していける(終わったら捨てられる!)ところ。その都度、小さな、でも確実な達成感を感じることができます。自分自身を動機づけるために不可欠な要素です(2024/3/31、Facebookに初出)。



2)施設長や主任になると、「(面倒だけど)この書類を仕上げなきゃ」「(いやだけど)〇〇さんに電話しなきゃ」といった仕事が増えます。「~をしなきゃ」と思えば思うほど、ますますいやになっていく…、でも、頭からは離れない…のが人間のややこしさです。方法を大きく分けると。

・電話などすぐに終わるものであれば、「いやなことは先に片付けちゃえ!」と自分に言う(声を出して)。または、まわりの職員に言ってもらう(←集団で働く強み)。で、終わらせる。
・すぐに終わらないもの(大きな書類づくりとか)は、上のように作業を小分けにするところから始める。
・書類づくりや気づまりな電話など、「やりたくない」「めんどくさい」気持ちが強い時は、保育に入る以外の、脳や感情を使わない、小さな作業をいくつかする(タオルをたたむとか、ゴミ置き場を掃除するとか)。「できた」「終わった」という感覚を感じると、面倒なことに取り組もうという気持ちが上がります。
・「~まで終わったら、ゼロ歳児の部屋へ行ってきていい」「~まで終わったら、お茶を飲む」など、自分で設定したゴールに対して小さなごほうびを自分で設定する。「自分で」がポイント。上のフセン法も同じですが、一つひとつのゴールが終わるたびに自分で自分をほめてあげましょう。



メモや連絡用紙を活用する

 さて、自分の脳+他人とのコミュニケーションです。

 一往復半(2-4)をして言われたことを復唱したからといって、必ず記憶に残るわけではありません。ですから、メモ用紙を1枚、ポケットにいつも入れておくのもひとつの方法です(ボールペン等はポケットに入れておくと危険ですから、こちらはロッカーの上か、柱にぶら下げておいてください)。そして、メモをできる時には、どんどんメモしましょう。メモした事項が終了したら、横線で消します。もちろん、子どもの名前や保護者の名前はイニシャルなどで書いておきます。

 あるいは、クラスのロッカーの上に、下のような連絡用紙を置いておくのもひとつの方法です。「見てない」「読んでない」をなくすため、チェック欄が不可欠。(2021/8/7)





事務室にいる園長、主任等にフセンで連絡する

 園内コミュニケーションは口頭が大部分です。そのため、「言った」「聞いてない」のこじれが生じます。さらに、「園長、電話中だ…(モジモジ)」「主任、いないのか。また来よう」、この時間も無駄です。

 下の「ホワイトボード+フセン」方式の柱は、
・口頭コミュニケーションの「言った」「聞いてない」を減らすために証拠を残す
・職員が事務所陣を探し回ることによって生じる時間の損失を減らす
・事務所陣が自ら職員の所へ出向く習慣をつくる。
 
 ですから、園長や主任が事務所にいたとしても、用件をフセンに書き、「これ、(いついつまでに)お願いします」と言って本人の前に貼ってかまいません。というか、貼るべきです。「この件、頼みましたよ」という証拠になりますから。 (2023/7/19)


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連携できた=伝えたことが現実になった

 ところで、園内コミュニケーションで必ず出てくる「連携」という言葉は、わかったようでわからないあいまいな言葉です。「連携をしっかりしましょう」と言って(書いて)おけばいいかのような「おまじない言葉」のひとつですけれども、おまじないを言っていても世の中は何ひとつ変わりません(おまじない言葉は他にも、「片付ける」「整理整頓する」「丁寧に~する」「真摯な気持ちで」「心をこめて」「主体的に」等々、山ほどあります。ある言葉が現実の集団の中でなにを意味するのか、それを明確にする重要性は8-1の「想定力」の項に置いてある「作業上の定義」に書いています)。

 私(掛札)は、「あなたがその人に伝えたことが、あなたが伝えたかった通りの結果になって初めて『連携が成り立った』と言う」と定義しています。「靴が脱げました。止まってください」と言って、先頭の先生が止まったら「連携が成り立った」。これは簡単ですね。それでは、「人数確認をしてください」は? 聞いた先生はその場にいる子どもの数を数えて「9人います」と言うかもしれません。でも、実は移動前の人数は10人だったのかも…。ならば、「人数確認をしてください。部屋を出る時は10人いました」と言わなければいけません。

 もっと複雑で、でもひんぱんに起こる「連携の失敗」もあります。「A先生。折り紙で飾りの花を作ってくれる?」「はい!」「来週火曜日までに20個、お願い」「はい!」…。火曜日になって…「20個、作りました!」「A先生、これ、違うんだけど」「え…」。以心伝心はない!のです。「A先生。折り紙で飾りの花を20個、作ってほしいんだけど」「はい!」「どんな花を作れる?」「あ、これです、私ができるのは」「ああ、そうか。それだとちょっと小さいから、これ、折れる?(ひとつ作る)」「あ、できると思います」「来週火曜日までにお願い」「はい、わかりました」。連携が成り立ったと言えるのは、後者です。

 もちろん、相手によっては「来週火曜日までに20個」がおぼつかない場合もあるでしょう。そういう時は、週末あたりに「先生、折り紙の花、いくつできたかな? 私の説明が悪かったかもしれないし、心配だから見せてくれる?」と尋ねてみる手もあります。「私の説明が悪かったかもしれないから」と言えば、相手もさほどいやがらないでしょう。実物を見せてもらったほうが無難です。実は違うものを作っている人、「作ってます!」と言うだけで実際はひとつも作っていない人がいるかもしれないから、です。

 とはいえ、「連携ミス」と呼ばれるものの大部分は、伝言ミス。言い忘れた、聞き間違えた、言い間違えた、聞いたけど忘れた…。未就学児施設は口頭のコミュニケーションが主ですから、伝言が多く、結果、ミスも起こりやすい。記憶に頼るのは危険です。伝言ミスをなくすにはやはり、上に書いたような「書いて伝える」「証拠を残す」方法が必須です。(2021/8/7)