2-8. ケガ事例と「いなくなる事例」の報告/予防策検討用書式
(2023/4/5)

 長年の懸案だった「ケガ事例」「ケガになりそうだった事例(ニアミス、ヒヤリハット)」「ケガになったかもしれない危険があった事例(気づき)」の報告用/予防策検討用の用紙を作りました。もうひとつ、昨今は報道までされてしまう「いなくなる事例」用の用紙も。他のできごとの「気づき(ヒヤリハット)」については、切り分けも含め、2-6をご覧ください。

 まず、このような様式にした理由を説明します。

  • 「ケガ」「いなくなる」は、できごとまでの経緯があるため、この用紙のような報告と検討が大切です。これ以外のできごとは、フセン法(2-6)をお使いください。ケガでも「はさむ」「刺す」「切る」は、フセン法が適しています。「はさむ」「刺す」「切る」がどう違うかは、こちら(2-1)
  • 先生たちは時系列に沿わない「物語」を報告書等に書きがちです(事故に限らず)。話が前後し、事実と推測と思いと願望が入り混じり、主語も目的語も欠け、そこにいなかった人が読むととても理解しにくい。(当初、事故報告書をあちこちで見た時に、元・編集者として「これはどうしたものか」と感じ、10年、試行錯誤をしてきました。)
  • ポイントは、「時系列で、事実だけを書く!」 まず「起きた瞬間」(太字の欄)を書き、「そこから遡る」+「そこから前進する」形にしました。時系列にマスを分けることで、話が行ったり来たりするのを防ぎやすくしました。
  • 記入者以外が「見たこと」は記入者と違うこともあるため、補足を書けるようにしました(これは遠い昔、都内のある区で作った報告書が元)。「事実」は見る人によって異なる、この点は『保育現場の「深刻事故」対応ハンドブック』に書いた通りです(※)。
  • 事実か推測か、証拠となる動画や写真があるかないか、動画をすでに確認したかどうかも書けるようにしました。職員の証言が動画等と異なる場合が多々あるためです。上の書籍に書いた通り、人間の記憶はきわめて脆弱です。記憶(=推測や後付けが多い)と動画の記録が異なっていると、それだけで保護者とこじれる原因になります。
  • 「起きたこと」「したこと」を細かく分割することで、どの箇所に介入できるか/できないか、どの箇所に「保育の質」としての改善が可能か/できないかを考えやすいようにしました。こうしないと、「起きたこと」「したこと」とは無関係な「反省」「改善もどき」が列挙されてしまうからです。詳細はマニュアルのPDFをご覧ください。
  • 「書けない」「難しい」とお感じになるでしょう。それは、皆さんが「短文で、事実のみを書く」という方法に慣れていないからです。これからは、事故やいわゆる「不適切な保育」で「事実と、園が言っていることの間の違い」が問題になっていきます。だから、「短文で事実のみを書く習慣」はきわめて重要です。
  • この書式は、手書きではなく、ワードのままお使いになることを強くお勧めします。文章を整理しながら書けるからです。行を増やすこともできます。短文で事実だけを書く練習にもなります。
1)ケガになった/ケガになりそうだった/ケガが起こる危険があった事例の報告用/予防策検討用用紙(マニュアルと例。PDF)と、記入用紙(ワード。クリックするとダウンロード)

2)子どもがいなくなった/いなくなりそうだった事例の報告用/予防策検討用用紙(マニュアルと例。PDF)と、記入用紙(ワード。クリックするとダウンロード)

3)ケガと「保育の質」に関する資料は、こちらの園内研修会用資料補足資料(身体発達とケガ)、頭部と腹部のケガ(5-1)、「ケガとは何か。ケガは大きく2つに分けられる」(2-1)、「保育の価値とリスク」(A-1)。

※見る人によって、ひとつのできごとがどのように違って見えるか、『保育現場の「深刻事故」対応ハンドブック』にある「個人の記憶の記録用紙」を使って時々、実験してみてください。「ケガになりそうだった事例」「いなくなりそうだった事例」が検討に適しています。複数の職員が異なる場所にいるできごとだからです。