3-4. 睡眠環境まわりの危なさ(製品)
(2017年。2021/11/23加筆、リンク更新)

ベッドやコットのまわりにあるヒモ状のもの

(この項は2021/11/23)
 子どもの睡眠モニターや、子どもの睡眠を見守るためのビデオカメラの電気コードを子どもが引っ張り、コードが首にからまって亡くなる事例は、世界でいまだなくなりません。日本でも起きていないわけはないのですが、日本の場合、保護者が公表しない限りわかりません。園で、子どものベッドやコットまわりに電気コードや配線、それ以外でもあらゆるヒモ状のものがあるなら、子どもの首にまとわりつかないよう確実に始末をしてください(ヒモ状のものの危険は2-2のこちら)。

・2011年、2児の窒息死後、200万台リコール(サマー乳児ビデオ・モニター、米国。日本も並行輸入)
・2013年、2児の窒息死後、「コード用カバーが付いていない」という理由で60万台リコール(エンジェルケア・ベビー・モニター、米国。同メーカーのモニターは日本でも販売)
・2018年、英国でモニター・カメラのコードで18か月児が死亡。保護者が危険をネット上で発信。


ベビーベッド・バンパー

 数年前からネット上でもよく見るようになったベビーベッド・バンパー(「ベッド・ガード」等とも呼ばれる。「バンパー」は車のバンパーと同じ意味)。ベビーベッドの柵の内側に張るパッドですが、「赤ちゃんが頭をぶつけるのを防ぐ」「柵に手足をはさまないように」「冷暖房の風が直接あたるのを防ぐ」といった理由があるようです。商品は各種、多数ありますので、ネットで検索してみてください(メッシュ生地のものもあります)。

(この段落は2021/11/23加筆分)
 2020年3月、米国消費者製品安全委員会(英語)は、パッドの入ったベビーベッド・バンパーの安全基準を従来の自主基準(ASTM基準)から義務に変更し、基準に合わない場合は製造・販売を禁止する方向で合意しました。特に、空気の流れについては、最低でもメッシュ生地と同等の流量を確保するように求めていく内容になるようです(メッシュ生地なら窒息が起きないというわけではないものの、枕のようにパッドが入ったものよりはマシ、ということ)。

(以下は2017年の原稿)
 米国小児科学会、米国国立衛生研究所、米国疾病対策センターは、「乳児死亡につながる」としてベビーベッド・バンパーを使わないよう呼びかけています。米国消費者製品安全委員会(CPSC)のデータによると、2006~2012年の間に米国で起きた死亡は23人。CPSCのデータを精査した研究によると、1985~2012年に起きた48死亡例の大部分が窒息でした。これ以外に、146人の乳児が窒息で死亡しかけたということです(この場合の窒息は、布で顔面が覆われる、または布で口または口の中をふさがれることによって起こるもの)。この内容は、2015年12月3日の米国小児科学会のニュース(英語)に書かれています。

 ベビーベッドの中にぬいぐるみ、柔らかな枕や布団を入れておかない、子どもの顔が布などで覆われないようにするのは、乳児の窒息死を防ぐ基本です。ベッド・バンパーは、こういったものと同じ事態を子どもに起こします。柵に張ってあるとは言っても、子どもが何かの拍子に横を向くなどしてバンパーに顔をつけたら…。

 米国小児科学会はすでに2011年には、バンパーを使わないよう保護者に呼びかけています。けれども、製品のリコールなどは行われておらず、啓発のみです。ちなみに英国では、バンパーを柵に縛っておくヒモがほどけて子どもの首にからまり、死亡した例(英語)も報告されています(実物の写真が載っています)。

 子どもが窒息死するリスクと、柵に自分で頭をぶつけたり手足をはさんだりするリスクを比べると、前者のほうが大きいというのが専門家の見解です。


寝返り防止クッション(枕)等の危険

(2017年10月9日)
 「寝返り予防クッション(枕)」「寝返り防止クッション(枕)」など、日本でも生後6か月ぐらいまでの赤ちゃんを対象に各種売られているもので、英語では baby positioner(ベビー・ポジショナー。position=位置、体位)と呼ばれています。2017年10月6日の英国BBCニュース(英語)によると、英国の大手小売業(ネット企業も含む)数社が窒息死の危険を理由にこの種の製品の販売を停止したとのことです。リコールではありませんが、自主的な販売停止です(寝返り用クッションの中には、真に「医療用」のものもあるため、リコールの対象にするのは難しいよう)。

 BBCの記事によると、米国ではこれまで12人の赤ちゃんの死亡について、この種の製品が明らかな原因とされているそうです。そのため、2017年10月7日には米国食品医薬品局(FDA)が注意喚起のページ(英語)を更新し(2019年4月にも更新)「この種の製品を絶対に使ってはいけない。横向きであれ、あおむけであれ、子どもをここに寝かせてはいけない」と強く警告しています。FDAは、上のページの中で「ベビー・ポジショナーが睡眠中の突然死のリスクを下げるというメーカーの主張をFDAが支持したことはなく、そのような主張を裏付ける科学的な証拠もない」と書いています。FDAは2010年の段階で、メーカーにこのような商品をつくるのを止めるよう伝えています。

 一方、米国消費者製品安全委員会(CPSC)は以前から、「乳児に枕を使わない」よう呼びかけています(英語)が、いまだにさまざまな形の枕が「向き癖防止」「斜頸防止」「頭の形がよくなる」といった理由で売られています(日本でも欧米でも)。米国では年平均32人の乳児(~1歳)の死亡が、枕によるものだそうです(おとな用のフワフワの枕をマットレス代わりに使った場合も含む)。

 保育園でも「寝返り防止」のクッション(枕)や枕は使わない。寝返りをさせないようにとタオルなどを巻いて頭の横にも置くのも、同様にきわめて危険です。保護者にも注意喚起をするなどなさってください。


安全な睡眠環境は?

 上の3つのサイトの情報をまとめると…、

仰向けに寝かせる(家庭では、寝かしつけをあおむけ寝に)。

眠る場所は、何もない平らな場所。やわらかいマットは使わない。

枕、ブランケット(上掛け)、使用中にゆるんだりたるんだりするシーツ等を乳児の下やまわりに置かない。上のCPSCのサイトによると、「枕の使用は1歳半から」となっています。もちろん、おもちゃやぬいぐるみをまわりに置くのも危険。ベビーベッドで起きている死亡の半数近くは、枕、厚い上掛け、ベッドの中にいろいろ入っているモノによるとのこと(米国CPSC)。

子どものからだが熱くなりすぎないようにする。厚い上掛け布団や毛布は、窒息の危険があるので使わない。BBCのニュースのビデオを見ると、バスタオル状のものも掛けていません。「寒くない服装をさせ、何も掛けない」ということのようです。「おなかが冷えると…」という日本の文化からすると、受け入れがたい方もいらっしゃると思いますが。CPSCは「薄いブランケットならよい」と書いていますけれども、家庭の場合、保護者も寝ている間に薄いブランケットが子どもの顔まわりを覆ってしまうリスクはあります。

・ベビーベッドの場合、ベビーベッド・バンパーは使わない。また、マットと柵の間に子どもの顔やからだがはさまらない、落ちないようにする。


おまけ:保育園における危険:外から柵の中に手を入れる

 一方、保育園の場合、ベビーベッドの外にいる子どもが柵から中に手を入れるので、どうすればいいかという相談を聞くことがあります。保育士さんたちといろいろ話して出たひとつの方法は、オーガンジーのようなメッシュ生地をベッドの柵の下側(外の子どもの手が届く部分)に張り巡らすことでした(網状の布では指がからむなどして危ない。透けない布だと子どもの姿が見えない)。この時、ベッドの外側に張ればよいのですが、薄い布だと外の子どもがひっぱってしまいます。なので、柵の縦棒に交互に(S字状に)張り巡らしては?という意見もありました。以上、参考までに書いておきます。

 もちろん、保育園の場合は、ベビーベッドの真ん中に子どもが上を向いて横たわっているよう、頻回のチェックが必要なのは言うまでもありません。布はあくまでも、外から子どもが手を入れるのを防ぐためです。