4-2. 食べ物による誤嚥窒息(2015年以降の記事をもとに2021/11/7加筆)

丸のままのミニトマト、白玉ふうの団子など

(保護者がつくるお弁当に関連した手紙のひな型はこちら

 「過去に、誤嚥、窒息などの事故が起きた食材(例:白玉風のだんご、丸のままのミニトマト等)は、誤嚥を引き起こす可能性について保護者に説明し、使用しないことが望ましい。」と内閣府のガイドライン3ページに書いてあります(掛札が書いた下書きには「使用しない」とは書いていません! こちらの2項め)。こう書いてある以上、あなたの園で起きたら? そして当然ですが、類似の食材でも事故は起きます。たとえば、2020年夏に起きた大きなブドウによる窒息死。大きなブドウはミニトマト同様、「つるん、ころん」(4-1参照)の典型的食材です。

★ミニトマトの死亡事例:2006年7月午前中、静岡県の保育園。園庭で遊んでいた1歳児が急に苦しみだした。搬送したが死亡、のどから直径約2cmのミニトマトが見つかり、ミニトマトによる窒息死と判明した。園庭ではミニトマトを栽培しており、この児はトマトが大好きだった。園庭では当時、保育士7人と実習生3人の10人が、この児を含む3歳以下約30人を遊ばせていた。

★白玉団子による死亡事例:2012年の栃木県栃木市(2歳児)の事例はこちらの検証報告書(園長、調理員、嘱託保育士が書類送検され、不起訴)。これと同じ冷凍白玉で2010年9月、栃木県真岡市の小学1年生が給食で誤嚥窒息、意識不明の重体、その後死亡(訴訟に進展)。2012年2月には東京都あきる野市の認可保育所で、1歳6か月児が誤嚥窒息、死亡。都への報告は8月(園名の公表等は一切なし)。

 未就学児施設ではありませんが、2015年9月、大阪市の市立小学校1年生が給食のおかずの中に入っていたウズラの卵を喉に詰まらせ、意識不明の重体。新聞記事によると、発生から6日後で容態に変化なし(意識不明)。記事には「市教委は再発防止に向け、給食をよくかんで食べることを児童らに指導するよう市立小中学校に通知するとしている」と書いてありましたが、ウズラの卵やミニトマトのような「つるん、ころん」は「よく噛む」という意思以前に歯の間ですべって逃げてしまい、吞み込めてしまう、その事実は無視して「嚙まなかった子ども」の責任にするのでしょうか。


節分の豆など、硬い豆やナッツ類

 2020年の節分の日、園の活動中に4歳児が豆を詰まらせて亡くなりました(検証報告書)。この事故を受けて、2021年1月20日、内閣府、厚生労働省、文部科学省、消費者庁が連名で事務連絡「節分の豆等の食品による子どもの窒息事故の予防に向けた注意喚起について」を出しています。未就学児施設で節分の豆をまいたり、食べさせたりしないでください。

 たとえば、家族の運転する車が急ブレーキをかけたため、後部座席に座っていた1歳児が頭をぶつけて泣き出し、口に入っていたピーナッツ(3分の2)を気管に吸い込むという事故も起きています(山中龍宏先生の『子どもの誤飲・事故を防ぐ本』、絶版)。麻酔をかけて手術をし、取ることができた事例ですが、急に泣き出す年齢の子どもでなくても、このような事態になれば泣くでしょうし、たとえ泣かなくても急ブレーキの衝撃で吸い込んでしまうリスクはあります。体を動かしながら食べること自体が危険なのですから、動いている車上で(詰まりやすい)ものを食べないというのも大事でしょう。

 「では煮豆は?」と聞かれるのですが、それは一人ひとりの子どもの咀嚼の発達、舌の動きの発達、嚥下の発達に合わせて、必要な場合はつぶす等することです。


イクラ(丸い形状。かつ膜に覆われている)

 山中龍宏先生が以前から話していらっしゃったイクラの事例(要約)。「ゼロ歳児がイクラ?」、最後までお読みください。そして、子どもの気管の細さを考えたら、ゼロ歳児でなくとも起こるという点にも留意を(園ではイクラを出していないと思いますが)。

 5ヵ月児。1997年、母親が児を見ていたところ、突然せきこみ全身チアノーゼが出現した。約45分後、救急車で受診。来院時、心肺停止状態。その後、心拍は再開したが、自発呼吸は認められなかった。当日、児はミルクと果汁しか飲んでおらず、入院時の問診からは誤嚥のエピソードは明らかではなかった。しかし、気道異物を強く疑い、5日後に気管支ファイバースコピーを行った。その結果、左主気管支に褐色で球形の異物を認めた。異物鉗子でつかみ引き出そうとしたとき、異物はつぶれてしまい、皮のみを摘出した。異物はイクラであり、自宅に残っていた同じものから直径7mmほどのやや硬めのものであることが判明した。再度、保護者に聞いたところ、台所のテーブルの上に置いてあったイクラを3歳児が児に与えたものと推測された。3歳児はふだんから患児の世話をやきたがり、お菓子などを食べさせていたらしい。 その後、呼吸状態は安定したが、低酸素性脳症による重度の後遺症を残した。(小児内科30:1363-1365, 1998) 。


ベビーおやつの誤嚥

 ベビーおやつ(1歳以下対象のせんべい、ボーロ等、乾燥したおやつ)は、赤ちゃんにとって安全と考えられがちですが、口の中や奥にはりつく等もします。東京都の東京都商品等安全対策協議会がまとめた資料のリンクを貼っておきます。 こちらのサイトの下にある「報告書の概要」、最初のページにニアミス事例が載っています。 啓発用リーフレットはこちら


気管に円筒状の菓子が詰まって死亡したケース(「傷害速報」から)

 小児科学会の「傷害速報」にはさまざまな深刻事例が掲載されており、このサイトのあちこちでも紹介していますが、医学の世界の言葉で書かれているので少ししきいが高い感じもします。なので、同サイトに掲載されている大事な記事の紹介を。誰でも知っている「タバコ型砂糖菓子」による窒息死です。

(要約)子どもは2歳2か月児。菓子は直径6~7ミリ、長さ53ミリの円柱状。夕食と入浴の後、児はこの菓子を口に入れた状態ではしゃいでいた。別の部屋に走り込んだ際に様子がおかしくなり、苦しがり始めた。母親が口の中に手を入れると、喉の奥の方で折れた棒状のものの端に指先が触れた。取り除こうとしたがうまくいかず、そのうちに指先に触れなくなった。119番通報。救急隊が来た時は「心静止」の状態。蘇生を続けた結果、搬送された病院で自己心拍が再開した。心静止の状態を確認してから自己心拍再開まで52分が経過。しかし、意識は戻らず、入院3日目に死亡。
(要約、終了)

 「傷害速報」に掲載されているPDFの後半に書いてありますが、同年代の子どもの気管の最小直径は5.8ミリ(計測した個人によって4.4ミリから6.7ミリの幅。1歳9か月~2歳6か月)だそうです。直径6ミリのこの菓子が窒息を起こすことは「充分可能であったと思われる」と書いてあります(逆に考えれば、直径6ミリの気管にミニトマトや白玉は詰まらない。この種のものは喉頭蓋よりも上の喉に詰まる)。保育施設でこのような菓子を食べさせることはないと思いますが、やはり「切り口が円」の食べ物は気管に詰まる危険が十分にあるということです。

  それともうひとつ。この事例は子どもが菓子を口に入れているのを家族が知っていたので、すぐに「詰まった!」と判断できました。けれども、乳幼児が口に何かを入れている状態で、そのことにおとなが気づかずにいる場合もあります(未就学児施設でも十分に起こり得ます)。たとえば、転んだ拍子に口の中に入れているものが詰まったら…? 駆け寄ったおとなが「大丈夫? どうしたの?」と言っているうちに…。園庭で栽培されていたミニトマトで起きた死亡事例(上)は、このパターンです。


食物による誤嚥窒息。輪切りソーセージ、球形チーズなど

 子どもに窒息を起こす食物というと「球形」というイメージがありますが、実際は「切り口が円」であれば、窒息の危険はあります。米国の場合、ホットドッグを食べている時の、ソーセージによる子どもの窒息が社会問題にもなっており、ソーセージは縦に裂いて、輪切りにしてから与えるようアドバイス(英語)されています。

 輪切りにしても「切り口は円」。イギリスの保育園で輪切りソーセージによる窒息死亡事故が起きた後も、「ソーセージは縦に裂いて与える」よう指示が出ています(英語)。園だよりなどには、「ソーセージは縦に2つ(か4つ)に裂く」と書いてください。「ソーセージは小さく切る」「4つに切る」と書くと、裂くのではなく、長さを短くする状態(=輪切り)に切るのだと勘違いする方がいるためです。

 日本でも2010年、ミニアメリカンドッグによる窒息事故(東京都。学童)が起きています。この報告書では原因不明であるかのように記載されていますが、米国でソーセージによる窒息が多発していることを考えれば、原因は容易に推測できたはずです。

 ミニトマト、ブドウ、チーズなど、球形の食べ物はすべて、2つか4つに切って与えることが重要です。球形の食べ物は、噛もうとしても口の中で逃げてしまい、ノドに入ってしまう危険性が高いので、4つに切ることが大切です。そして、ソーセージやスティックチーズなど、「切り口が円」のものは、まず縦に裂きましょう。

 「日本では、輪切りソーセージによる事故は起きていないんでしょう? 大丈夫なんじゃない?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。そこでひと言。家庭で起きた事故の場合、保護者に報告義務はありません。つまり、家庭でお子さんがソーセージやこんにゃくゼリー等でお亡くなりになった場合、保護者の意向で、報告されない、ニュースにならない場合もあるのです。日本の文化を考えてみてください。「見守っていなかった親が悪い」「そんなものを子どもに食べさせるなんて」といった非難は、家庭の事故の場合、たいてい保護者に向かいます、食品そのものではなく…。そんな文化の中で、表に出ない子どもの死亡はたくさんあるはずなのです。

 イギリスや米国で食べているソーセージは、私たちがふだん食べているソーセージと変わりません。ということは、日本の家庭や未就学児施設のどこかで、同じような事故、同じような重症・死亡事故が起きてもおかしくはないということになります。それでも、「大丈夫でしょ」と考えるのか、「万が一」に備えたひと手間の作業をいとわないのか、それは園や保育行政担当の方の危機管理意識によります。同じ危なさの条件がある場合、いつ、どの未就学児施設で死亡・重傷・重症事故が起こるかは、誰にもわからない…、私たちは、そのことを忘れてはいけないのです。