4-3. シール、テープ、紙類の誤嚥、誤飲(2015/7/20)

実は多発しているタイプの誤嚥、誤飲

 命にはあまりかかわらないため注目されませんが、未就学児施設で多発する誤嚥・誤飲事例、あるいは誤嚥・誤飲のニアミス事例が、シールやテープ、紙類によるものです。この東京都の報告(リーフレット等のPDfも掲載)は家庭で起きている事例ですが、未就学児施設でも、シール、テープ、ビニール、テプラ類、虫よけパッチ、シール状の気管支拡張剤、ばんそうこう、ラップ、絵本や段ボールなど、さまざまなもので起きています。また、未就学児施設ではヨーヨーや風船も見ますが、日本小児科学会の「傷害速報」の48には、1歳11か月児が水風船(ヨーヨー)を飲み込み、気管支から取り出すのに3時間以上かかった事例も掲載されています(同ページ下のPDFをご覧ください)。

 なんでも口に入れ、なんでもカジカジかじる月齢の子どもたち。口に入れること、かじること自体をやめさせる必要はありませんし、できません。問題なのは、口に入れた状態の子どもをおとなが見ていない場合です。厚紙類であれば、口やのどの奥で水分を含んでふくらむ、あるいは小さい破片が気管に入る危険もあります。薄いシール状のものは、口の中やのどに貼りつく可能性があります。さらに、貼りついた時にはただ「口の中に貼りついているだけ」だったものが、水などを口にした時にはがれ、のどに移動していってしまうこともあります。特に0歳や1歳は、口の中になにか貼りついている程度では、なにも訴えない可能性が十分ありますから、シール類がのどに移動して子どもが苦しみだしても、おとなにはなにが起こったのかわからない、対応が遅れる、という場合もありえるのです。


具体的なチェック行動を毎日、してください

 こうしたものは誤嚥窒息の原因にもなりえますし、窒息はしなくても気管支などにはさまった状態になって苦しい状態が続き、取り出すのに長時間かかるケースもあります。ですから、特になんでも口に入れる月齢の子どもたちのクラス、そういった子どもたちが来る部屋では、次のようなチェックを数日に一度、必ずしてください。一度にすべてをチェックするのは大変ですから、「月曜日はこの本棚。火曜日は部屋の壁」「水曜日は廊下」などと決めるのも一策です。

1)製作物を貼ったテープが、製作物をはがした後も壁に残っていないかチェック(乾いて床に落ちたものを、子どもが口にする)。あったら取り除く。

2)床、テーブル、ロッカーなどに貼ってあるテープ、テプラ類がはがれかけていないか。大きな(長い)テープであれば、はがれかけたところを切る。はがしたらそのまま口に入るような小さなサイズのテープは、はがしてつけ直す。

3)ペットボトルの手作りおもちゃは、フタを巻いてとめているテープがはがれていないか、チェックする。はがれていたら、はがれている部分を切り取る。巻きが少なくなったら、全部はがして巻き直す。(次項参照)

4)ほどけかけている厚紙(絵本など)の角は補修する。

5)床に落ちているもの(おもちゃ以外)は、拾う! これは、テープやシール類に限りません。ゴミでもなんでも拾うのが当然ですから。

 虫よけパッチや気管支拡張剤のテープなどは、保護者に「貼ってきたら、職員に必ず口頭で伝えて」と知らせるべきです(連絡帳に書かれたのでは気づくのに時間がかかる)。貼っている子ども自身は、なんでも口に入れる時期を過ぎていても、はがれた(はがした)テープで小さい月齢の子どもが危険にさらされる可能性があるからです。このための手紙(掲示)例はこちら。楽観バイアスゆえに、保護者も「自分の子どもがそんなこと(シールやテープを口にする)をするわけがない」と思いがちです。ですから、「あなたのお子さんが…」ではなく、「他人の子どものことを考えて…」と、保護者の行動、子どもの行動が他の子どもにとって害になる可能性もあるという伝え方をしています。


ビニールテープか、接着剤(グルーガン)か

  ペットボトルの手作りおもちゃのフタを接着剤でとめることを、私(掛札)はお勧めしていません。接着剤でとめてあるものを見ると、私は必ず開けようと試みますが、少なくとも1本はフタが開きます(何本もあったおもちゃ全部のフタが開いたこともあります)。色水ぐらいなら健康に害はないでしょうけれども、ビーズ類が入っていた場合、子どもが開けようとして開いていまい、中身を飲み込んだら…?

 接着剤でとめたフタは、いつか必ず開きます。そして、いつ開くかは誰にもわかりません。先生が確認しながら消毒している時に開けばよいのですが、子どもがおとなの真似をして開けようといて開くこともあるでしょう。「ボンドでとめてあるから大丈夫」と思って、遊んでいる子どもを見ていなかったら、突然、フタが開いて子どもが中身を飲み込むということもりうる(=危険が突然、子どもの目の前に表れる)のです。

 一方、フタをテープでとめてあったら? 先生たちは、かじっている子ども、はがそうとしている子どもに意識を向けざるをえませんし、はがれているテープに気づきます(気づかなければ、または気づいても問題と思わなければ、それはその先生の問題でありまして…)。「ああ、切れそうだな」「かなりはがしたな」と思ったら、その場ではがれている部分を切り、渡す。子どもはまた、最初からかじる、はがす行動をし始めるでしょう。「あと1周分しかついてない」と先生が気づいたら、はがして巻き直します。こちらであれば、子どもの目の前に危険(中身)が急に現れることはなく、先生は「危険に気づく時間」をかせぐことができます。

 「危険だから、テープ類はいっさい使わないようにしよう」という考え方は、間違いです。世のなかに完全に安全な物、完全に安全な素材はありません。ペットボトルのおもちゃの場合、「この条件だと、子どもの目の前に急に危なさが出てきてしまう(=先生が間に合わない)」のか、「この条件ならば、子どもの目の前に危なさが出てきそうだということに気づく時間をかせげる」のか、そのように考えることが大切です。 ちなみに、フタをとめるテープは透明ではないほうがいいと思います。透明なテープは見えにくいので…。