5-2. 散歩の安全、交通事故
(2019/5/8以降に掲載していた記事の中から抜き出し、加筆していきます。2022/1/3)

 「散歩の安全が確保しきれない」という場合は、こちら(B-2、ひな型)の検討も。



「散歩の安全マップ」を作る

(この記事は2019/6/3)
 散歩の行き先(公園や広場)には必ず価値とリスクがあるはずです。そして、価値もリスクも、年齢(クラス)や時期・季節によって違うはず。まず、「行った先の価値とリスク」を明確にしましょう。

 次に経路を考えると、行き先へたどり着く以外、経路には価値がなく、リスクばかりという場合もあるでしょう。ならば、いかにリスクを下げるか(どの道を通るか。その道をどのように歩くか)。でも、行き先の価値と経路のリスクを天秤にかけたら、価値はたいしたことがなくて、経路のリスクのほうが大きいということも実際あります。「ここまで危ない思いをして、あの公園まで行く必要はない」という判断もあり得ます。ですから、お散歩は必ずルート別の検討を。

 上記の点をはっきりさせた上で、散歩の安全マップを作りましょう。例は、あけぼのこども園(京都市)と姉妹園さん。園内ワークで下書きを作ってみましたので、その方法を紹介します。


(クリックすると大きな画像が表示されます)

1)大きい白紙を用意。今回は、カレンダーを2枚はりあわせた裏側を使用しました。全員で集まる必要はありません。時間がある時に先生たちが立ち寄って、どんどん書き足していきましょう。

2)散歩ルートをすべて描けるよう、園の位置を決めます。東西南北にでかけるなら園は一番真ん中に描く。ここがまず大事。

3)マジックで道を描いていきます。先生たちはほぼソラで描けるはずです、毎日のように歩いている道ですから。交差点、個人宅から出てくる私道、信号、横断歩道、標識、ガードレール、白線などを描きます。この時の注意:道は1本の線ではなく、幅のある面として描かないと、次に道路のどちら側を通るかが描きこめません。

4)目立つ色で、歩くルートを描き入れます(複数のルートを色別に)。この時、道路のどちら側を歩くのかもわかるように描きます。

5)危ない箇所をマジックで書き込んでいきます(職員全員が気づきを出しあう)。「角が死角」「信号がない」「横断歩道がない」「白線が消えている」「坂で加速する」「逆走車がいる」「角のミラーがない」「一時停止の標識がない」「ガードレールはあるけど、反対側は深い排水溝だからガードレール側は歩けない」「遊歩道のブロックがガタガタ」「遊歩道なのに、自転車に乗って走ってくる人がいる」「トラックが多い」「車が駐車場から出てくる」「毛虫が出る」などなど。

6)散歩のルートで、交通ルールに従うことができない箇所を目立つ色のマジックで書き込みます。「横の排水溝にフタがないので、ガードレールの中は歩けない」「道を渡る回数を減らすために、白線ではない側を歩く」「信号のない横断歩道は次の角まで迂回すればあるけれども、公園まで直線で行くため、横断歩道のない所を渡る(いずれも中央分離帯のない細い道路)」「チャドクガの季節はツバキの並木側は歩けないので、白線のない反対側を歩く」など。こうした点を明記しておかないと、万が一、事故が起きた時に「なぜ交通ルールに従っていなかった?」と言われてしまうリスクがあります。

7)みんなでどんどん書き足した後、清書します。できあがったもののコピーを自治体と警察に渡し、自治体や警察に改善してほしい箇所も伝えます(※)。園内に掲示して、自治体/警察に伝えた旨を保護者に報告し、保護者にも付箋で書き足してもらいましょう。

 上の写真が、姉妹園のワークで描いた下書き。ルート上に横断歩道が一切ない「住宅地+小さい畑」の地域ですが、横断歩道がないぶん、車は徐行や一時停止をしないという危険があります。なので、横断歩道が「ほしい」と書き込んであります。

 一方、あけぼのこども園がある地域には、地域の安全マップがありました(ハザード・マップの交通安全版、写真)。ぜひ、皆さんの地域でも「安全マップを作って!」と自治体、警察に働きかけてください。あけぼのこども園では、このマップをコピーして地図の部分だけを切り取り、白い紙の上に貼り、そこにワークで作った下書きをもとに4)と5)の内容をマスキング・テープで貼りこみました。


 こちらが上の写真の一部です。


※自治体や警察に提出する地図には危険箇所を細かく細かく書き込み、要望も付けましょう。「白線が消えている」「一時停止の標識をつけて」「横断歩道をつけて」「ガードレールをつけて」「自転車が入ってこないようにして」「スピード落とせ、の標識をつけて」「車用のミラーをつけて」「信号をつけて」「信号の時間を長くして」「信号を歩車分離にして」など、どんなことでも。「言ってもどうせ何もしてくれないから」と、要望を書かないで出したら? 危険箇所も中途半端にしか載せていなかったら? 指摘していなかった場所で事故が起きた時、「園が気づいていなかったのだろう」「園の責任」と言われかねません。
 細かい指摘と要望を自治体や警察に出しておくのは、「私たちは危険をわかって対策を立て、活動をしているけれども、本来、対応するのは自治体/警察だ」と伝えておくためです(=責任を自治体と警察に手渡しておく)。危険箇所と要望を提出したら、その後もことあるごとに「改善はどうなっていますか?」と尋ねましょう。自治体や警察は、「調査した」で終わりにすることが多々ありますから。