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2-3. 各種の誤嚥と誤飲(2015年7月8日~)


ベビーおやつの誤嚥(2016年9月21日)
「傷害速報」から(7月8日)
食べ物による誤嚥窒息を防ぐには
食物による誤嚥窒息。輪切りソーセージ、球形チーズなど(一部加筆・修正)
誤飲または誤嚥:水でふくらむ玩具
(2018年5月23、28日加筆)誤飲:子どもの口に入るサイズの磁石は危険


ベビーおやつの誤嚥

 ベビーおやつ(1歳以下対象のせんべい、ボーロ等、乾燥したおやつ)の安全性についてお尋ねをいただいたので、東京都の東京都商品等安全対策協議会がまとめた資料のリンクを貼っておきます。このページに概要が書かれており、ページの一番下に報告書等のPDFも置いてあります。このページの3にあるリンクを開くと、啓発用リーフレットのPDFも置いてあります。

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「傷害速報」から

 小児科学会の「傷害速報」には、さまざまな深刻事例が掲載されていますが、医学の世界の言葉で書かれているので少ししきいが高い感じがします…。なので、ここでは同サイトに掲載されている記事の紹介をします。詳しくは、それぞれに貼ってある元のリンクをご覧ください。

 「2-1. 誤嚥と誤飲の新しい基準:玩具を中心に」に掲載している「木製玩具の誤嚥」も「傷害速報」に報告されている事例です。その他、「スーパーボールの誤嚥窒息死」「ブドウの誤嚥窒息」等があり、これから掲載していきますが、最近の記事をまずひとつ。誰でも知っているはずの、「タバコ型砂糖菓子」による窒息死です。昔から「危ない」とは聞いていましたが…。言うまでもありませんが、下の記事に書いた通り、この菓子も「切り口が円」です。

(以下、要約)
 子どもは2歳2か月児。菓子は直径6~7ミリ、長さ53ミリの円柱状。夕食と入浴の後、児はこの菓子を口に入れた状態ではしゃいでいた。別の部屋に走り込んだ際に様子がおかしくなり、苦しがり始めた。母親が口の中に手を入れると、喉の奥の方で折れた棒状のものの端に指先が触れた。取り除こうとしたがうまくいかず、そのうちに指先に触れなくなった。119番通報。救急隊が来た時は「心静止」の状態。蘇生を続けた結果、搬送された病院で自己心拍が再開した。心静止の状態を確認してから自己心拍再開まで52分が経過。しかし、意識は戻らず、入院3日目に死亡。
(要約、終了)

 「傷害速報」に掲載されているPDFの後半に書いてありますが、同年代の子どもの気管の最小直径は5.8ミリ(計測した個人によって4.4ミリから6.7ミリの幅。1歳9か月~2歳6か月)だそうです。直径6ミリのこの菓子が窒息を起こすことは「充分可能であったと思われる」と書いてあります。

 保育施設でこのような菓子を食べさせることはないと思いますが、やはり「切り口が円」の食べ物は気管に詰まる危険が十分にあるということです。

  それと、もうひとつ。この事例は子どもが菓子を口に入れているのを家族が知っていたので、すぐに「詰まった!」と判断できました。けれども、乳幼児が口に何かを入れている状態で、そのことにおとなが気づかずにいる場合もあります(保育園でも十分に起こり得ます)。たとえば、転んだ拍子に口の中に入れているものが詰まったら…? 駆け寄ったおとなが「大丈夫? どうしたの?」と言っているうちに…。このような事例は、園庭で栽培されていたミニトマトで起きているようです(死亡事例)。保育現場では、こうした深刻事例の予防のために何をするべきでしょうか。

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食べ物による誤嚥窒息を防ぐには

 日本における子どもの傷害予防の第一人者である小児科医・山中龍宏医師(緑園こどもクリニック院長)が、『子どもの誤飲・事故(やけど・転落など)を防ぐ本―これでおかあさんも安心』(絶版)に、食べ物による誤嚥窒息を防ぐためのポイントを書いていらっしゃいます。その要点を記しておきます。園だよりなどでもお役立てください。


●保育園でも家庭でも役に立つポイント
-3歳になるまでは、乾いた豆類や、乾いた豆類が入っているチョコレートなどは食べさせない。
-食事中に、子どもの肩をたたいたり、大声で呼んだり、びっくりさせたりしない。
-薄い小片になる食べ物は禁物。生のニンジン、セロリ、リンゴ片などはやめ、つぶしたり、粉状に。
-ソーセージやフランクフルトは小さく切り、ソーセージの外皮ははぐ。
  (掛札:輪切りにするのではなく、先に「縦に裂いて」から切りましょう)
-プチトマトなど、球形のものは、2つか4つに切る。
-食事中は、子どもから目を離さない。

●特に、家庭で役立つポイント
-寝た姿勢で食べる、歩きながら、遊びながらの「ながら食べ」はしない。
-車や電車、飛行機の中では、豆類は絶対に食べさせない。急停車や揺れが誤嚥を招くことがある。
-節分の時は、豆をまいたまま放置しない!
-上の子が乳幼児に食べ物を与えないように注意。上の子が与えたイクラで、5か月児が窒息(重篤な脳障害)を起こした事例もある。

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食物による誤嚥窒息。輪切りソーセージ、球形チーズなど

 子どもに窒息を起こす食物というと「球形」というイメージがありますが、実際は「切り口が円」であれば、窒息の危険はあります。米国の場合、ホットドッグを食べている時の、ソーセージによる子どもの窒息が社会問題にもなっており、ソーセージは縦に裂いて、輪切りにしてから与えるよう指導(英語)がなされています。

 輪切りにしても、「切り口が円」であることに変わりはありません。イギリスの保育園で輪切りソーセージによる窒息死亡事故が起きた後も、「ソーセージは縦に裂いて与える」よう保育園に指示が出されています(英語)。(園だよりなどにお書きになる際は、「ソーセージは縦に2つ(か4つ)に裂く」と書くようになさってください。「ソーセージは小さく切る」「「4つに切る」と書くと、裂くのではなく、長さを短くする輪切りの状態に切るのだと勘違いする方がいるためです)。

 日本でも2010年、ミニアメリカンドッグによる窒息事故(東京。学童)が起きています。この報告書では原因不明であるかのように記載されていますが、米国でソーセージによる窒息が多発していることを考えれば、原因は容易に推測できたはずです。

 「切り口が円」と考えると、「スティックチーズは?」とお考えになる方もいらっしゃると思います。スティックチーズによる事故は確認されていませんが、2006年には、球状の個装チーズによる窒息未遂事故が保育園で起こっています。家庭でも球状チーズによる窒息事故が最近、発生しています。

 ミニトマト、ブドウ、チーズなど、球形の食べ物はすべて、2つか4つに切って与えることが重要です。球形の食べ物は、噛もうとしても口の中で逃げてしまい、ノドに入ってしまう危険性が高いので、4つに切ることが大切です。そして、ソーセージやスティックチーズなど、「切り口が円」のものは、まず縦に裂きましょう。

 「日本では、輪切りソーセージによる事故は起きていないんでしょう? 大丈夫なんじゃない?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。そこでひと言。家庭で起きた事故の場合、保護者は必ずしも報告の義務を負いません。つまり、家庭でお子さんがソーセージやこんにゃくゼリー等でお亡くなりになった場合、保護者の意向で、報告されない、ニュースにならない場合もあるのです。日本の文化を考えてみてください。「見守っていなかった親が悪い」「そんなものを子どもに食べさせるなんて」といった非難は、家庭の事故の場合、たいてい保護者に向かいます、食品そのものではなく…。そんな文化の中で、表に出ない子どもの死亡はたくさんあるはずなのです。

 イギリスや米国で食べているソーセージは、私たちがふだん食べているソーセージと変わりません。ということは、日本の保育園のどこかで、同じような事故、同じような重症・死亡事故が起きてもおかしくはないということになります。それでも、「大丈夫でしょ」と考えるのか、「万が一」に備えたひと手間の作業をいとわないのか、それは園や保育行政担当の方の危機管理意識によります。同じあぶなさの条件がある場合、いつ、どの保育園で死亡・重傷・重症事故が起こるかは、誰にもわからない…、私たちは、そのことを忘れてはいけないのです。


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誤飲または誤嚥:水でふくらむ玩具

 このところ、水に入れるとふくらむビーズ状の玩具(素材は吸水ポリマー)があるようです。元のビーズ(固い)は、2ミリ程度の小さな球から、数センチの各種の形。これを水に入れると、小さな球は2センチ程度に、他の形も何倍にもふくらみます。ペットボトルなどの中に水と入れておくと、さまざまな色や形が見られ、きれいなため、縁日などでも(ふくらんだものが)「ビーズすくい」のような形で売られているようです。

 保育園でも、水の中にこれが入ったペットボトル(遊具として使われています)があります。保育園の場合、毎日、遊具の消毒をするでしょうし、その時にフタ(ビニールテープなどでとめられている)が取れそうになっていないか、ペットボトルが割れていないかなどをチェックしていると考えます。

 ここで起こりうる深刻な事態は、もとの固いビーズ、各種の形のものを子どもが飲み込んだ場合です。当然、食道以降、消化器官の中でふくらみ、閉塞などを起こす可能性があります。欧米ではこういった「水に入れるとふくらむ玩具(water expandable toy)」は、次々とリコールになっています。下の写真の製品は、米国等でリコールになった玩具ですが、8か月のお子さんが元のボール(キャンディぐらいの大きさ)を飲み込み、それが小腸でふくらんだため、手術をして取り出したという例です。もちろん、レントゲン写真で発見することはできません。


 上写真説明:元はキャンディの大きさ。水で400倍にふくらみ、腸閉塞を起こした(米国でリコールになった玩具)。日本では同じタイプのものがまだ売られています。

 非常に小さなサイズのものであっても、子どもが元のビーズをいくつも一度に飲み込んだら…? また、輸入玩具として、欧米ではリコールになっている他の「水でふくらむ玩具」が日本ではまだ売られているようです。

 くれぐれも、元のビーズを子どもの手が届くところに置かないよう徹底してください(製品の注意書きにもそのように明記されています)。「安いから」と保護者や子どものおみやげにすることは避けた方が良いと私は思います。

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誤飲:子どもの口に入るサイズの磁石は危険

(加筆は一番下)
 「保育室内(特に乳児の部屋やその周辺)では、子どもが飲み込むサイズの磁石は使わないでください」と、私は申し上げています。外側を覆っているプラスチック等の大きさだけではありません。使われている磁石自体が子どもの飲み込むサイズであった場合、磁石がとれて、それを飲み込むと、子どもの命を危険にさらしかねないからです。ご存知の通り、掲示用の磁石は、落としたりすることで簡単に磁石がとれます。

 ブラジルの医学雑誌に掲載された18ヵ月児の症例では、日本でもよく見られるプラスチックの枠がついた磁石2つが、腸内の壁越しに付き、腸の瘻孔を起こしました。(レントゲン写真と、手術によって発見された腸の瘻孔の写真はこちらの英語論文に掲載されている写真をご覧ください。手術写真のようなものは見たくないという方もいらっしゃると思いますので、ご注意を。レントゲン写真のすぐ下に手術写真があります。)

 また、The New England Journal of Mediine (NEJM)に掲載された症例では、9歳児が23個の磁石を(下左写真)、その4日後に発達遅滞のある13歳児が15個の磁石を(下右写真)を飲み込み、同じイタリアの病院に入院、どちらも穿孔などで手術となりました(L.Avolio & G. Martucciello. NEJM, 2009; 360:2770)。この磁石は、棒状の磁石玩具とみられます。



 一方、日本ではまったく話題になっていませんけれども、欧州、米国、カナダ、オーストラリアでは、2012年夏から「成人用の希土類(強力)磁石玩具」(下写真)のリコールと注意喚起が進んでいます。日本でも同じ商品、または類似の商品が販売されています。販売以外にも、記念品などとして配られているようです。


 この玩具は、強い磁力で物理模型などのさまざまな形を作ることができるため、人気がありますが、子どもにとっては非常に危険です。下のレントゲン写真は、米国の消費者製品安全委員会(CPSC)の注意喚起サイト(英語)からコピーをしたものです。子どもの体内で小さい磁石がつながっているのがご覧いただけます。上の輪状になった症例では、37個の磁石が胃腸の中でつながっています。




 どちらの写真でも、磁石がただつながって見えるだけですが、上の、磁石が輪状に見える写真の3歳児(米国、オレゴン州)の場合、磁石が腸の壁越しにくっついてしまっており、胃に1か所、腸に3か所の穴があき、緊急の開腹手術が必要となりました。(ニュースビデオはこちら。英語ですが、レントゲン写真や手術後の様子などは画像でおわかりいただけると思います)。

 米国では、2009年6月から2011年10月の間に22件の事故報告(18か月~15歳)があり、うち11件は要手術例でした。「なぜ10代が?」と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。この玩具は磁力が強いため、耳や唇などにピアスのかわりにつける子どもや若者もおり、それを間違って飲み込んでしまった事例のようです。

 子どもの目から見ると、この小さな磁石は、ケーキの飾りについている銀色にコーティングされた砂糖(アラザン)のようにも見えるようです。「おとなが使うためのものなのだから、子どもの手の届くところに置くほうが悪い」「リコールにすることではない」…、確かにその通りです。私自身、一斉リコールには、疑問を感じています。しかし、深刻な事例が起きていることを知っていたら、小さい子どもがいる友人(保護者)にこのような玩具をプレゼントするのを思いとどまる方もいらっしゃるかもしれません。友だちが喜ぶだろうと思ってあげたプレゼントで、そのお子さんが傷害を負ってしまったら…? 「買う、買わない」「あげる、あげない」「使う、使わない」は個人の選択ですが、このような危害が起きていることを知っているかどうかは、私たちおとなが選択をする上で重要です。(ここまで、2015年の記載)

 そして、日本の場合、このような情報が流れていないこと自体が大きな問題なのです。欧州共同体(EU)のリコール/輸入水際規制報告のサイトを見ていると、日本ではごく普通に売られている商品がたくさん、輸入禁止やリコールになっていることがわかります。食べ物の形をした浴用剤、芳香剤、磁石のついた飾り等々…、そして、日本の家庭の冷蔵庫にごくあたりまえに付いている「食べ物の形をしたマグネット」などは、完全に輸入禁止です。すべて、「子どもが口にする可能性があるから」です。
 (この内容については、「安全のトピックス」の「5. 参考資料」に置いてある『赤ちゃんとママ』の連載第3回にも書きました)。

(2018年5月23日加筆)このところ、ようやく磁石の危険性が言われるようになってきました(消費者庁)が、一方、保育施設できわめて小さな磁石を見ることも増えました。たとえば、下の写真のような、プラスチックの棒に小さな磁石を埋め込んだ(または接着した)マグネット・バーです。ホワイトボードなどに紙を掲示する時などに使われています。

 このタイプのものは、当然、磁石を埋めてある部分のプラスチックが薄く、下の写真のように簡単に割れます。ご覧の通り、プラスチックの表面に出ている磁石部分は非常に小さいのですが、中にある磁石は厚くなっています(そうしないと、磁石が簡単にとれてしまうからでしょう)。はずれた部分をよく見ましたが、接着してあるようでもなく、ものによっては、ただ、溝にはめてあるだけかもしれません。そうなると、割れなくても落ちる可能性があります。


 下の写真は、掛札が以前、保育園で拾った磁石です。四角いものは上と類似の商品でしょう。丸いものは、プラスチックの板に2つ、丸い磁石がとめてあるものと思われます。ボールペンはサイズの比較のためです。上のような製品を使っている方は、「磁力は弱い」と思っていらっしゃるかもしれません。表面に出ている部分が小さいからです。でも、どちらも実は、磁力がとても強いものです。そして、子どもが容易に口に入れるサイズです。なにより、落ちていてもおとなには見えにくいサイズです。


 玩具にもこのような磁石が使われているものがあります。プラスチックの板にこの四角のものと類似のサイズの磁石を入れた玩具がありますが、特にその種の玩具の廉価版は、この棒の磁石同様、くぼみに磁石を埋めてあるだけですので、プラスチックも割れやすく、磁石が取れやすくなっています(事例あり)。

 最近は、画鋲代わりに強力な小さい磁石(プラスチックでカバーされている、円形からピン型まで、さまざまな形のもの)を使っている園も増えています。昔から使われているマグネット(丸い磁石にプラスチックのカバーがついたもの。磁力はそれほど強くない)であっても、上のブラジルの事例のように危険なのですから、今、使われている強い磁石は…。とにかく最低限、未満児の部屋、未満児が通る場所などには、「子どもの口に入るサイズの磁石は使わない」ことが基本です。代わりに、磁石の棒にプラスチックのカバーがついたものをお使いください。

(2018年5月28日加筆)2017年の「ニュース」(11月11日)で、11歳児がボタン状の磁石を両方の鼻の穴に入れ、手術で取る事態になったケースを紹介しました(ギリシャ、キプロス)。放置すると、磁石が鼻中隔を圧迫し壊死する危険があるので、全身麻酔をし、家庭用の強力な磁石を鼻の外側に当てて磁石を引きはがす手術に。成功したものの、鼻中隔は穴があき、軟骨を覆う粘膜がはがれて、添え木を10日間あてがうことになったそうです。粘膜が完全に元どおりに戻るまでに半年かかったとのこと。鼻のレントゲン写真はこちら(元の論文の冒頭、The New England Medical Journal, Oct, 26, 2017)。これは乳幼児もしますし、幼児も11歳も「実験」で、わざわざするでしょう。「私たちがみている子どもはそんなことしない!」と思わないことです。「この子たちもするかも…」です。鼻に入れられる磁石は、誤飲できるサイズの磁石の中でも小さいものでしょうから、誤飲の危険があるサイズ(もともとでも壊れてでも)の磁石を使わずにいれば、このような事例も防げるということになります。



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