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C-1. ところで、コミュニケーションとは?(2015年8月16日)


1)コミュニケーションは、受け取る側が主体
2)受け取る側のクセを考える
3)日々、無意識にしている戦略的コミュニケーション
4)人間は、相手の感情、言動、行動の真似をする(ミラー・ニューロンの働き)
5)効果的なコミュニケーションの基礎:自分の感情をしっかりとらえる


1)コミュニケーションは、受け取る側が主体

 コミュニケーションとは、「私が~さんに伝えたいことが、~さんに伝わるように、伝えること」です。または、「~さんが私に伝えたいことを、受けとめること」です。「私が考えている(思っている)ことが、相手にわかるように(理解できるように)伝わること」ではありません。「C-2. 園内コミュニケーション(口頭)のルール」に書いたような一見、簡単なコミュニケーションであっても、あなたが「これでわかるでしょ!」と思って口に出したことが、「あなたが伝えたいような形で」相手に伝わるとは限らないのです。
* このページの内容は、9月に出る新刊『子どもの「命の守り方:変える! 事故予防と保護者・園内コミュニケーション』(掛札著。エイデル研究所)にも、少し違う視点から書いてあります。

 まず、コミュニケーションの語源は「(大切なものの)共有」です。共有ですから、必ず、「発信する側」と「受け取る側」がいます。そして、ここはとても大事なことですが、コミュニケーションというのは、発信してしまったらそれで終わり、後は受け取る側に任されるという点です。受け取った言葉をどう曲解しようと、都合のよいように解釈しようと、受け取った側の勝手です。だから、自分の思いや考えをそのまま出したのでは危険ですし、効果的でもないのです。常に「このメッセージを、このメッセージの受け取り手はどう受け取るか」を考えることが不可欠です。

 たとえば、話し言葉であれば、「ごめんなさい。今、言ったこと、忘れてください」と言うわけにはいきません。受け取り手に誤解された時に、「そんなつもりで言ったんじゃありません」などと口走ろうものなら、「『そんなつもり』ってどういうこと?」と逆上されかねません(「そんなつもりじゃ…」は、「誤解したあなたが悪い」というニュアンスの言葉ですから)。話し言葉は絶対に、考えなしに口から出してはいけないのです(たとえ親友であっても、家族であっても。話し言葉の一撃が、言った側、聞いた側の一生を左右することすらあります)。話し言葉では特に、言葉と言い方を意識しながら、コミュニケーションをつくっていく必要があります。

 一方、書き言葉は、相手の解釈や受け取り方を考えながら読み直し、書き直すことができます。ところが、一度渡してしまった書き言葉は、メールであってもおたよりであっても、相手の手元に残ります。相手は何度でも読み返すことができます。こちらが、「捨ててしまってください」と言うわけにはいかないのです。この点、話し言葉なら相手が忘れてくれる可能性もなきにしもあらずですが…。ですから、書き言葉の場合は、必ず推敲してから送る、発行することが不可欠です。そして、推敲は決して自分だけではしないこと。あなたが「これでわかるでしょ」と思って書いたことが、他人にはまったく伝わらないこともあるからです。

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2)受け取る側のクセを考える

 「自分の思いや考えを率直に話したり、書いたりすれば、ちゃんと伝わるのでは?」…、残念ながらそうはいきません。人はそれぞれ、「聞き方のクセ」「話し方のクセ」を持っているからです(あなたが自分で思っている「自分の話し方の率直さ」さえ、他人から見ると「乱暴」「雑」と見える話し方のクセかもしれません)。特に大切な話をする時、ややこしい話をする時、こうした相手のクセを考えずに発信をすると、コミュニケーション(共有)はまったく成り立たないのです。1対1のコミュニケーションであれば、「私が~さんに伝えたいことが、~さんに伝わるように、こちらの発信のしかたをしっかり操作する」ということです。

 相手が集団(例:クラスの保護者)であっても、「自分の都合のいいようにしか解釈しない~さん」や「説明してもわかってくれない~さん」に合わせる、ということです。「自分の思い、考え」も「相手にわかるはず」「理解できるはず」も、こちらの勝手な思い込み。自分の思い込みを離れて、「こう伝えたら、相手(この人、この人たち)はどう受け取るか」を常に考えてください。

 「聞き方のクセ」「話し方のクセ」とは、たとえば、「なんでも本人の都合のよいように解釈する」「なんでも本人が責められているように解釈する」「なんでも『他人が悪い、私は悪くない』という態度で話す」「なんでも『私が』『私が』で話す」といったものです。まわりの人たち、あるいは自分を観察してみてください。こうしたクセを持っていない人はいません(クセはあっても、自分でコントロールできている人はもちろんいます)。ただ、自分のクセはなかなか自覚できないものですから、まわりの人たちに尋ねてみてください。「あなたは、こういう聞き方、話し方のクセがあるよ」と言ってもらえたら、「そんなことない!」とは絶対言わず、「そうなんだ。教えてくれてありがとう」と受けとめましょう。

 こうした個々人のクセを理解して、それに合わせる形で話を組み立てていかなければ、相手はなにも受け取りません。それどころか、コミュニケーションがうまくいかず、人間関係を悪化させてしまう危険性すらあります。「そんな、ろくでもないクセを持っている相手が悪いんだから、こちらが合わせる必要なんかない」とお思いになるかもしれません。でも、そう言ったところで相手は変わりませんし、そもそも相手(他人)を変えることなど、(ほぼ)できないのです。一方で、自分(私、僕)の言動、コミュニケーション方法は、「変えてみよう」と思って取り組んでいきさえすれば、変えることができます(C-6)。そして、そうやって取り組めば、職場だけでなくすべての場所で、あなたのコミュニケーションすべて、あなたの人間関係すべてが良い方向に進みます。

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3)日々、無意識にしている戦略的コミュニケーション

 「そんなの、めんどくさいなあ」と思わないでください。あなたも必ず、日常生活の中で「相手に(自分が思う通りに)動いてもらうためのコミュニケーション」「人間関係を壊さないためのコミュニケーション」、つまり「戦略的なコミュニケーション」をしているはずです。

 たとえば、家族に「ちょっとゴミ、出してきて」と言う時。「もう、ほんとに。何度言ったらわかるの! 出してきてよ」と怒った声で言うのか、「いや、ここで怒ったら朝の気分が台無しになるし、ケンカになる」と思い直して「ごめんね。私、今、お弁当で手が離せないから、ゴミを出してきてくれないかな。ありがとう!」と明るいトーンで言うのか…。これだけで、相手の行動、自分の気持ち、人間関係は大きく変わります。「ここで怒ったら…」と考えて、「んっ」と一瞬がまんをするのはつらいかもしれません。けれども、頬骨筋を上げて真の笑顔になり、明るいトーンで(C-4)「お願い! ありがとうね」と言えば、脳内エンドルフィンの効果で気分は良くなります。そしてなにより、相手がそれで気持ちよく動いてくれたら、「やった! できた!」という気持ちになるでしょう。

 コミュニケーションは、家庭でも友だちの間でも職場でも、ほぼすべて、ゴール(目標、目的)のある戦略的な取り組みなのです。そして、「終わり良ければすべて良し」。ちょっとがまんをした自分のつらさはすぐに吹き飛んで、「明るく言えた私」「気分良く過ごせた朝の1時間」、さらには「一瞬がまんして、コミュニケーションを変えられた私の自信」が心に残るはずです。

 ここでオマケ。「ムッとしている私」「相手に腹を立てている私」という感情を抑えなさい、無視しなさい、隠しなさい、と言っているわけではありません。自分が感じている感情をしっかりとらえなかったら、そこから直接出てきそうな言動(言葉、ものの言い方のトーン、態度)は予測できないからです。「あ、怒っているな、私。このままだと怒鳴るぞ」とわかったら、その瞬間に「ここで怒鳴ったらどうなるか」を考え、その結果が望まないものなら、「じゃあ、どういう言葉をどういう言い方で言えばいいのか。表情は?」と考えて、その言動を表出させればいいのです。

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4)人間は、相手の感情、言動、行動の真似をする

 ミラー・ニューロン(mirror neuron)という言葉を聞いたことがあると思います。ミラーは「鏡」、ニューロンは「神経細胞」です。そして、脳の中にあるミラー・ニューロンは、他者に対する共感を起こすらしいということがわかっています。ここで言う「共感」とは、「そうなんですか」「大変でしたね」のような共感ではなく、もっと直截な意味の共感、つまり、相手が感じているように自分の脳も感じるということです。

 ミラー・ニューロンは1980年代、サルの脳を研究していたイタリアの研究者の発見から始まります。たとえば、1匹のサルがピーナッツをもらうと、そのサルの脳の特定の場所の神経細胞が反応します。すると、ピーナッツをもらったサルを見ている別のサルの脳の中で、同じ場所の神経細胞が反応するのです(ピーナッツはもらっていないにもかかわらず)。人間の場合、サルのような実験(例:脳の中の神経細胞に直接、電極を刺す)はできないため、詳しいところは少しずつわかってきている状態ですが、人間でも同様に、観察者の神経細胞が反応することが明らかになっています。たとえば、目の前で子どもが転んで、膝をしたたか打ちつけたのを見て、保育者が「うわ、痛い!」と、まるで自分が膝を打ったかのような感覚を持つのも、この働きです。(参照文献は米国心理学学会のサイト、英語)

 ミラー・ニューロンは、行動、言動、そして、行動や言動に表れる感情にも働きます。つまり、あなたが「ちょっと、ゴミ、出してきてよ!」と怒った声で怒鳴ったら、相手も怒った声で返すように人間はできているのです(意識してコントロールしない限り)。そして、あなたの最初のいらだちも、相手が言葉の端々、行動の端々で見せているいらだちから来ているのかもしれません。効果的なコミュニケーションや良い人間関係をゴールとするなら、この「いらだちの悪循環」はどこかで切る必要がありますし、切ることはできるのです。人間は、意識して行動、言動を変えられる生き物なのですから。 


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5)効果的なコミュニケーションの基礎:自分の感情をしっかりとらえる

 「私、配偶者(園長、先輩)に怒鳴られても、怒鳴り返さないけど…」という方もいらっしゃると思います。でも、それは怒りを感じていないということではありません。怒りは感じています。そういった場合、怒りは別の対象へ向いたり自分へ向いたり、または怒りが別の方法(口をきかない、相手にわからない方法で仕返しする、まわりの人にその人の悪口を言うなど)で出たりもします(例:いわゆるpassive-aggressive、パッシブ・アグレッシブと呼ばれる対人タイプ)。あるいは、自分の怒りを自分で無視したり、歪めたりしているかもしれません。

 

 コミュニケーションに関連する自分の行動を変えようと思うなら、自分が、「今、ここ」で感じている感情は無視してはいけません、絶対に。逆に、自分の「今、ここ」の感情を常に実感しながら、コミュニケーションのゴールにあった言動をつくっていくことです。なぜなら、コミュニケーションのゴールには、あなたの今の感情がどうなってほしいかという点も含まれるからです。「怒鳴り合っているのは、いやだ」という感情そのものも、コミュニケーションのゴールのひとつ(大きなゴールのひとつ)になります。

 では、少しずつ、コミュニケーションのポイントを書いていきます。

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