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7-1. 食べ物による誤嚥窒息等


栽培のミニトマト、トマト(2017年4月12日)

 そろそろ栽培の苗や種を注文し始める時期かと思います。どうぞ、ミニトマトおよびトマトの栽培はおやめくださいますようお願いします。(以下の2文は2017年7月2日加筆)「今年はもう、なり始めている…」ということであれば、子どもの手指が通らない目の細かい網で囲ってください(トマトを網で囲った写真はこちら。ビニールのように見えますが網です。ビニール等で囲うと腐ってしまいますから…。これは『乳幼児のための事故予防』(掛札、2012)にも登場いただいた東京都日野市のつくしんぼ保育園の園庭の畑です)。そして、撤去または囲った場合は、こちら(コミュニケーションのB-1)にある「トマト、ミニトマトの栽培を中止した時、網をかけた時」の掲示を貼り出して、保護者にもお伝えください。


 丸のままのミニトマト(食事)については、内閣府のガイドラインの3ページに、以下のように書いてあります。
「過去に、誤嚥、窒息などの事故が起きた食材(例:白玉風のだんご、 丸のままのミニトマト等)は、誤嚥を引き起こす可能性について保護者に説明し、使用しないことが望ましい。」

 私(掛札)が書いた下書きには、「使用しないことが望ましい」とは書いていません(9ページ)。
「(3) これまでに誤嚥窒息事故が起き、過失を問われる可能性のある食材(例:白玉、丸のミニトマト等)については、自治体、法人、企業として「施設がこの食材を出す理由(行事食等)」を保護者に説明し、誤嚥リスクに対して理解を求める(または、食べさせないでほしいという希望を入れる)。これもリスク・コミュニケーションの一例である。」

 ミニトマトと白玉(白玉風の団子、と拡大されていますが)だけが誤嚥、窒息を起こす食べ物ではありません。兵庫県保育協会の事例集(安全に関するトピックス 5-3)や、日本小児科学会の「傷害速報」を見れば明らかです。ですから、これだけを使用しないのは、「他の食べ物は安全」という誤解も招きかねません。なぜ、「使用しないことが望ましい」とガイドラインに書かれたのか、理解に苦しみます。

 しかし、ガイドラインに掲載された以上、丸のままのミニトマトや白玉(風の団子)で誤嚥窒息し、死亡や後遺障害が起これば、社会的責任を強く問われかねません。ですから、食事のミニトマトは半分に切る(面倒なら大きいトマトを角切りなどにする)、白玉(風の団子)は避ける、です。

 問題は栽培のミニトマト(またはトマト)です。ガイドラインでは食事のミニトマトしか挙げられていませんが、栽培のミニトマト(トマト)も同様…、どころか食事のミニトマトよりもずっと危険です。園庭で栽培している場合、子どもが自分でとって口に入れることができます。子どもは小さい緑色のものも口に入れます(食べるためではなく、遊んでいるだけでしょう)。

 食事中は保育者が見ているのが原則です。でも、園庭等で遊んでいる時はそうではありません。つまり、栽培のミニトマト(トマト)は、子どもがいる保育室にスーパーボールのようにきわめて危険なものを放置しておいて、保育者が見ていないのと同じ状況をつくっていることになります。

 トマトを口に入れているところを見ていなければ、子どもが倒れたり苦しみだしたりしても、保育者は「窒息だ」と気づけないでしょう。結果、救急対応が遅れます(このような事例は実際、保育園で起きています)。

 「ミニトマトはかわいいから」「緑から赤に変わっていくところを楽しめる」「子どもが自分で取って食べられる」…、ミニトマト(トマト)を育てる価値はわかります。でも、それと「保育者が見ていないところで誤嚥窒息が起こるリスク」を天秤にかけてください。誤嚥窒息はこちらに書いた通り、救急対応をしても異物が除去できない可能性のある深刻なできごとなのです。

 どうしても(ミニ)トマトを栽培したいという場合は、保護者全員にミニトマトを栽培することに伴う価値とリスクを伝え、保護者全員の意見を聞き、そのうえで決めてください。子どもはいろいろなことを試し、いろいろなもので遊び、育っていく生き物ですから、誤嚥窒息のリスク自体をゼロにすることはできません。「ミニトマト禁止」と言うのは簡単ですが、必ずしもそれが正解とは限りません(小学校1年生になったとたん、丸のままのミニトマトは安全になる?)。価値とリスクについて、保護者としっかり対話をするのも重要です。同じ危険は家庭にもあるのですから。


節分の豆(2017年1月15日)

 4歳の誕生日を迎えるまでは、豆類をそのまま食べさせてはいけません。誤嚥窒息の危険性があるからです。日本小児呼吸器学会山中龍宏医師は「3歳の誕生日まで」と書いていますが、一番新しい全米小児科学会の勧告(英語)によると、4歳までは窒息の危険性が高いようです。もちろん4歳以降でも、遊び食べをする、歩き食べをしていてつまずく、口に入れている時に驚くなど(=いずれも急に息を吸い込む)すれば、容易に窒息します。

 保育園で節分の豆まきをするかどうか。「乳児は豆をまかないから」…、幼児がまいた豆を乳児が拾って口にすることはあります。「幼児の部屋の中だけでする。終わったら掃除をする」…、人間の行動に「完璧」はありません。なにより、幼児はいろいろなものをポケットの中に入れ、落としながら、あちこち歩きまわります。そして、幼児でも窒息しないわけではないのです。毎年、何人もの子どもが節分の時期、豆による窒息で救急搬送されている事実を理解してください。

 子どもたちは、豆まきの豆を鼻や耳にも入れます。豆は中で水分を含んでふくらみ、腐りもします。鼻の中に詰まって鼻の臭いで気づいた例もあります。鼻や耳は、気づかなければ非常に深刻な結果になりかねません(入っているのに気づいたら、取り出そうとせず、病院へ。取り出そうとして奥に入れてしまうこともあります)。

 「殻付きピーナッツをまくので大丈夫です」…、ピーナッツ・アレルギーのお子さんがいれば危険なのはもちろんわかっていらっしゃると思いますが、ピーナッツがひとつしか入っていない豆なら、十分、窒息する大きさです。「殻付きのピーナッツを口に入れるなんて」…、それはおとなの世界の常識かもしれませんが、子どもには通用しません。

 「でも」…、よくよく考えてみてください。「窒息死のリスクをおかしてまで、保育園で本物の豆をまく価値があるだろうか?」「みんなで豆を食べる価値があるだろうか」と。節分の豆まきは、家庭でもできますし、実際にしています。保育園でする必要のあることでしょうか? 本物の豆をまく価値と、万が一、子どもが窒息死した時の社会的責任の大きさ、職員の心と仕事に対するダメージを、意識的に天秤にかけて考えてください。窒息は解除できないこともあり、解除できなければ死亡するか脳に障害を残します。そこまでのリスクを、「うちで起こるわけがない」「大丈夫」「体験させてあげたい」のひと言で負うべきではないでしょう。

(おまけ:節分の日、子どもをおどかしすぎないように気をつけて。節分の後、眠れなくなる子ども、その後、夜中に起きて泣く子どももいるようです。)

 他の誤嚥・窒息については、「安全に関するトピックス」の「2.誤嚥・誤飲」の各項をご覧ください。



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