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1-7. 「見ていない」が前提:水、ヒモ、布、詰まるモノ(2017年1月15日)


「息ができない」「数分で命を奪う」ハザード

 ハザードとは、「人に危害を及ぼす(潜在的な)力をもったもの」です。子どもにとっては、身のまわりのほぼすべてのものがハザードです。けれども、すべてのハザードが同じように深刻な結果をもたらすわけではありません。特に、保育園は子どものための場所ですから、深刻なハザードはもともと取り除かれています(掛札の『子どもの「命」の守り方』、69ページ以降にくわしい解説がありますが、それを読まなくても以下はご理解いただけます)。

 保育園における深刻なハザードの代表は、水、ヒモ、布(睡眠中)、詰まるモノ、この4つです。どれも、きわめて深刻な結果をもたらす可能性のある環境(物理的)要因です。つまり、
1)いずれも、「息ができなくなる」、そして、
2)ほんの数分で命が失われる可能性がある

 子どもが棚にのぼって落ちた! 確かに大ケガをする可能性があります(高所=深刻なハザード)。でも、落ちた子どもはまず泣きます(=保育者が気づく可能性が高い)。そして、結果は無傷、軽症から重傷まで幅広くなります(=必ずしも、すぐに死ぬわけではない)。一方、上の4つ(水、ヒモ、布、詰まるモノ)、これは子どもが泣くこともなく(=保育者は気づかない可能性がある)、息のできない状態が続けば死亡か、脳障害という結果になります。

 では、水、ヒモ、布(睡眠中)、詰まるモノという4つのハザードはどう扱えばよいのでしょうか。
★保育者(職員)がしばらく目を離したとしても、子どもがこのハザードで死なないようにしておく。★
 これが基本です。

 なぜ? まず、人間は見守り続けることができません。平常時ならそれでも、室内にいる子ども全員を見渡していることができるかもしれません。でも、考えてみてください。1歳児が吐いた。「うわ、処理パックを取りにいってくるね」「他の子が近づかないようにしとく!」、もうこれで保育者2人の手が完全にとられます。残りの1人や2人の職員では、目も手も足りません。今の人員配置ではこれが当然なのです(だから安全上、人員配置はまったくの不足です)。

 そして、水、ヒモ、布(睡眠時)、詰まるモノは、数分で子どもの命を奪います。だから、いつ訪れるかわからない緊急時、なにかの理由で子どもから目を離さざるを得ない時、こうした時のために、水、ヒモ、布(睡眠時)、詰まるモノは、「数分やそこら目を離していても、子どもが死なないようにしておく」ことが重要です。そうしておけば、安心して保育をすることができます。


水の扱い方は2つ

 水は数センチでも子どもの命を奪います。「何センチまでなら安全?」、そんな実験は誰にもできません。ただ、数センチの水で亡くなっている事例がある以上、何センチであってもきわめて危険と考えておくべきです。おとなは水が危険であると知っていますが、子どもは知りませんし、水が大好きです。
 水の扱いは、簡単に分けて2つです。

1) あけられる水、捨てられる水はすべてあける、捨てる
 たとえば雨のあと、たらいにたまっている水、タイヤの間に入っている水、砂場を覆っているシートにたまっている水などなど…、すべてあけて、捨ててしまってください。この数分の手間が、子どもの命を奪う確率を下げます。

2) 子どもが近づけないようにする
 園の敷地内でも、あけることのできない水、捨てられない水があります。雨水ますの水、排水溝の水、災害時用に水をためてあるプール、メダカが入っている桶(園庭)、ビオトープなどがこれに該当します。これは、子どもが近づけないような方策を立てる以外に方法がありません。雨水ますや排水溝なら重いフタ、または工具がないとはずせないフタをしておく、プールは柵をして鍵をかける、メダカの桶の上部には網を張る、ビオトープは…(これは難しい。子どもが近づくことを前提としているので)。

 ここで大事なのは、子どもが「近づかない」ようにしておく、ではなく、「(物理的に)近づけない」ようにしておく、ことです。「近づかないようにする」は「言ってきかせる」や「見守る」ですが、それは無理であることが前提。「今、近づかないように言って、この子たちが聞いても、私たちが見ていない間に自分で近づくかも」と考えて、「近づけない」ようにするのです。たとえば、メダカの桶を上からじっとのぞきこむことはできても、網を張ってあれば、水に顔をつけることはできません。プールの柵のところまで行って中を見ていても、プールの場所には入れない。それで良いわけです。水からの距離の遠近ではありません。たとえ距離は近くても、水に落ちない、水に顔をつけられない、そういう環境条件をつくっておけばいいのです。


ヒモ、ヒモ状のもの

 しまい忘れた縄跳びや綱、カバンかけにかけてあるバッグやカバンのヒモ(長いヒモが、フックにかからずに輪状になってだらんと垂れている側)、発表会などの後にそのままぶら下がっているスズランテープ…などがここに該当します。窓のブラインドのヒモが危ないことはよくご存じだと思います。ヒモと言っても、おとなが「これはヒモ」と認識するものだけではありません。タオルもヒモ状になります。カーテンをまとめておくタッセルもヒモ状です。「そんなもので窒息するの?」と言わないでください。いずれも窒息または窒息になりかねなかったニア・ミスが起きています。

 ブラインドの事故でよく知られている通り、首全体にヒモが巻きつく必要はありません。ヒモ、またはヒモ状のもので喉の部分が強く押されるだけで死亡します。

 ヒモの扱いは難しくありません。「これは危ない。子どもが巻きつけるかも」「倒れこんだら、頭が入って首のところを絞めてしまうかも」と思ったら…
1) 切れるヒモ、要らないヒモは切る、捨てる
2) ブラインドや展示物用でそこになくてはならないヒモは、短くまとめて、子どもの手が届かないところにくくっておく。
3) カバンやバッグの手提げ部分、肩かけ部分の片方がカバンかけから垂れさがっていたら、かばんかけのフックにかける。ナップザック状のものなど、ヒモが長い時は両方のヒモをまとめて短くくくって、かける。


布(睡眠中)

 ガーゼ、ぬいぐるみ、ふとん、タオルなど、口をふさいだら窒息する可能性があるハザードは、睡眠中、子どもの頭まわり、顔まわりからどかします。これはあおむけ寝の場合も変わりません。ベビーベッド・バンパーのようなものは、保育園の場合、もちろん禁忌です。

 なぜ、睡眠中だけ? 子どもが起きているなら、保育者は時々見て、「あ、ガーゼ、口に入れすぎ…。はい、出して」と言えるはずだからです(安全よりも保育の領域)。次の「詰まるモノ」のように、布が一気に子どもの喉に詰まることは、まずありえません。けれども、睡眠中はどうしても保育者の目が減りがちなので(「静かに寝ているのだから大丈夫」という気持ちもある)、眠っている子どもを見た時に頭まわりや顔まわりに布や布状のものがあったら、どかしてください。

 もうひとつ、特にベビーベッドを使っている時に危険なのは、ベビーベッドとふとんのサイズが合わないケースです。ベッドのサイズよりもふとんが大きければ、ベビーベッド・バンパーのような状態になるわけですから、ちょっと横を向いただけで口をふさぎます。ベッドのサイズよりふとんが小さいと、すき間に頭を入れて窒息します。このタイプの死亡は、死亡報告が家庭から盛んにおこなわれる米国ではよく起きていますから、日本でも同じように危険です。

 ふとんの長辺がベッドよりも足りない(=丈が短い)のであれば、子どもの頭側のベッド柵にぴたりとふとんを押しつけ、足側のすき間にウレタン・ブロックでもなんでも入れておけば、ふとんはずれないでしょう(すき間にモノを詰めるのは、絶対に足側です。頭側にすき間をつくってそこにタオルなど入れたら、よけいに危険です)。ふとんの短辺がベビーベッドより短い(左右にすき間ができる)場合にどうするか…。これは悩みますが、タオルを巻いてすき間に入れるようなことだけはやめたほうがいいでしょう。知らぬ間にひっぱり出して、顔を横向きにつける可能性があるからです。

 「子どもがひっぱり出せるわけがない」…、子どもには意図がまったくなくても、からだを動かしている間にひっかかって、ひっぱってしまうことは多々あります。米国では、乳児用の見守りセンサーの電気コードがいつの間にかベッド下からひっぱり出され、首に巻きついて死亡した事例もあります。ベビーベッドに寝ている乳児でも、「できないだろう」「やらないだろう」は、ナシです。


喉に詰まるモノ

 これは、「2-1. 誤嚥と誤飲の新しい基準」に書いた通りです。ただし、このハザードには上の3つとは異なる深刻さがあります。上の3つはいずれも、「息ができない状態」に早く気づき、その状態をすぐに解除し、心肺蘇生をすれば、生き返る可能性がおおいにあります(だから、睡眠時のチェック、監視が重要なのです)。ところが、喉に詰まるモノ(誤嚥窒息を起こすモノ)の場合、背部叩打法をしようがなにをしようが出てこない場合があります。一方、喉に詰まるモノは、「詰まりそうだった」「詰まった」がひんぱんに起き、それでもたいていは出てくるので、上の3つよりも「大丈夫」という気持ちが育ちやすいのです。

 基本は、子どもが口に入れてしまった後、一気に「んぐ」となりそうな形(最も危険なのが球)、素材(木、プラスチック、ゴムなどの塊)です。2-1の「イチゴのトントンおままごと」の事例(PDF)を見てください。「飲みこめそうにはないけれども、喉の一番上にはさまるもの、ふさぐもの」も危険です。「飲みこめないから大丈夫だよ」はナシです。

 トントンおままごと類の中には、分かれた一部が危険な形で大きさ、というものもあります(例:ニンジン、大根など)。そういう場合、マジックテープをはがして、強力接着剤でつけてしまうこともできるでしょう。接着剤はどんなに強力でも、だんだんはがれてくるでしょうから、接着した場合にはチェックが必要になります。

 そして、「これはどう考えてもダメ」という形、サイズ、素材のおもちゃがあったら、すぐに捨ててください。「片づける」ではありません、「捨てる」です。なぜかというと、片づけたおもちゃは、担任が変わったりした時などに押し入れの奥から出てきて、再び使われ始めるということもあるからです。

 「詰まりそうなおもちゃ」のチェックをしている時、「大丈夫」という言葉はきわめて危険です。「大丈夫だよ」「自分で出したし」「取り出せたよ」「おもちゃが減っちゃう」…、もし万が一、そのおもちゃで子どもが窒息死したら、「大丈夫」と言った保育者も「じゃあ、いいか」と思った保育者も一生、後悔します。だから、「これ、心配」「これ、詰まりかけたよ」というものがあったら、潔く捨ててください。そして、できればメーカーや納品業者に、「こういうものは危ないから作らないで」と言ってください。そう言っていかなければ、こういった事故はいつまでも、保育者(家庭で起これば保護者)の責任にされてしまうのです。


気づいたら共有を

 以上のような危険に気づいたら、「こんなことに気づいて、こうしたよ」と共有してください。どれも「気づいてくれてありがとう」「教えてくれてありがとう」と言い合える事例です。こちらについては、「1-1. 日常の『気づき』を深刻な結果の予防に活かす」をお読みください。



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