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8-2. 暑さ、熱中症(2018年7月17日~)


★考え方  ★各種情報とデータ  ★報道と周辺情報

(8月8日:「各種情報とデータ」の下のほうに加筆=必要な水分量)

考え方

●子どもの熱中症は100%、予防できるはずです。でも、子どもは熱中症のリスクもわかりませんし、自分で熱中症の症状を感知できません。中高生になれば感知はできるかもしれませんが、部活動や行事等の場合、自分で活動を止めることができない心理的状況に置かれます。子どもの熱中症、体育・行事・部活動等で起こる熱中症は、おとなの無知と無理によるもの、つまり「100%、おとなの責任だ」とみなすべきではないかと掛札は考えます。

●気象の観測地点は、風通しのよい場所にあります。園のほうが観測地点よりも暑いと考えるべきです。外活動、プール活動、水遊びをする場所の、子どもの高さ(おとなの高さより暑い)に気温計、WBGT計を置いて測ってください。活動時には必ず、値を記録しておきましょう。「この値だから、私たちは外遊び/プール活動の実施を決定した」という証拠です。

●「この温度なら」「この暑さ指数なら」…、いろいろお尋ねをいただいています。基本の考え方をまとめてみました。〔絶対〕以外は現状、園の判断となりますが、今後、死亡事例が保育園等で起きれば、状況(暑さをめぐる判断に対する社会の見方)は変わり、判断も変更を余儀なくされるでしょう。今回、暑さに対して見方が変わったひとつの理由は、小学校1年生が7月17日に亡くなったこと、ですから。
〔絶対〕自園に近い観測地点で暑さ指数(WBGT)が「危険(31以上)」≒「高温注意報(気温35度以上)」なら、外に出さない。これで熱中症が発生してお子さんが亡くなったりした場合には園の責任ですから。そして、この指標を下回ったら通常通り実施するという取り組み方をする。
〔次の段階の、「しない」自主選択〕近い観測地点は上の指標を下回っても、観測地点よりも園のほうが暑いと考えられるので、活動(外遊び、プール活動、水遊びなど)をする場所の子どもの高さの気温またはWBGTを測り、それが指標以上なら〔絶対〕と同じ扱いとする。
〔そのまた次の段階の、「しない」自主選択〕園の子どもの高さの気温が上の指標を下回っても、子どもの体調を考慮に入れて、暑さがおさまるまでは外遊びをしない。子どもはクーラーの中で生活しており、暑熱馴化(暑さに慣れる。下の情報参照)していない場合が多い。また、今年の暑さは急に来たので、短期暑熱馴化が起きていないと想定される等の理由。

●これまで複数聞きましたが、救急搬送時、救急隊員や医師から「この程度で搬送しないで」と言われるケースがあります。躊躇せず、「私たちは人様のお子さんの命を仕事をして預かっている専門家ですから、救急搬送しました」と毅然と言ってください。熱中症でも食物アレルギーでも。

●「今までは大丈夫だったから」と皆さん、おっしゃいますが、一番下に載せた通り、地球は暑くなっています。もちろん、これからも「冷夏」はあるでしょう、この先、8月は列島じゅうが寒くなるかもしれません(「周辺情報」のNASAの動画で寒い「青」の年があるように)。でも、気候が徐々に暑くなり、極端な天候が増えているのは事実です。今回のような熱波(heat wave)が今後もやってくると考え、「今までは~だったから」ではなく、「これからは~しよう」と保育全体を考えていく必要もあるでしょう。問題は暑さそのものだけではありません。亜熱帯~熱帯化が進めば、蚊が媒介する感染症(デング、マラリア等)も増えるでしょうし、ヒアリ、アカカミアリのような危険外来生物が定着する可能性もあります(「報道と周辺情報」に資料)。公園でも園庭でも遊ぶことが難しくなっていく可能性を見越した「これから」を考えていくべきではないかと掛札は考えます。

●水温の話で「プール活動をする」前提で、「何度ならプールに入れていいのか」ということになっていますが、プール活動自体のリスク(4-4)についてもお忘れなく。

●当然のことですが念のため。こういう議論をしていると「何℃?」という判断基準の話ばかりになります。でも、一番重要なのは、その日の子どもたちの様子と体調、指導/監視をする職員の体調だということも決して忘れないでください。

●保育室内の冷房の温度について、お尋ねをいくつもいただいています。調べてみると、「28度」は労働安全衛生法等にあるそうですが、健康上の根拠はあるようなないような…。「外気との差が5度」というのも複数出てきましたが、「それは最高気温が35度以下だった頃の話じゃない? 外気が38度だったら室内は33度。暑すぎ!」…。わかりません…。ただ、ひとつはっきりしているのは、おとなにとって「涼しい」室温は、子どもにとっては「寒い」ようだということ。子どもはおとなよりも筋肉(熱をつくる)が少ないから、のようです。プラス、冷気は下にたまるので。ですから、まずはサーキュレーターを置いて室内の空気を循環させ、冷気が床にたまらないようにする。そして、床のあたりで28度ぐらいになるようにしてはいかがでしょうか(冷房の設定温度ではなく、実際の計測温度)。サーキュレーターの正しい向きは冷房の時と暖房の時とで違うので、ネットで検索してください。また、サーキュレーターを床にそのまま置くと子どもが指を入れるなどして危険なので、(効果が下がってしまいますが)棚の上に。

●「台風くるかも…。夏まつり、中止しようか」「でも、大丈夫じゃない?」…? 人間は天候/気象について「大丈夫じゃない?」を言います、実に頻繁に。天気予報がきわめて確率的な情報であり、実際、「結局、大丈夫だった(=実施すればよかった)」という経験を何度もするからです。そして、「中止!」すれば当然、災害も事故も起こりませんから、実際に台風が来たとしても「大丈夫だったんじゃない?」が頭をもたげるのです。「何も起きなかった」は自分たちの選択の成果/効果なのですが、それを「もともと何も起きなかったはず=すればよかった」と解釈してしまうわけです。どうぞ、そういう時は2017年の大田原高校の雪崩事故をはじめとする、「きっと大丈夫」の結果として起きた深刻事故を考えてください。「実施すればよかった!」が出てきたら、「確かにそうだけど、それは天気予報がはずれたから言えることだよね」と考え直しましょう。これも「中止する勇気」です。※「気候(climate)」は地球の気候、温帯や熱帯等の気候帯。天候/気象/天気(weather)とは別です。


各種情報とデータ

●体温ほどの高温、高い湿度がなぜ熱中症につながるのか。環境省の『熱中症環境保健マニュアル2018』のI-2. 「熱中症はどのようにして起こるのか」をお読みください。

保護者に外遊び中止を伝える手紙ワード:クリックしてダウンロード。PDF:クリックして開く。日付は変えてください)。保護者と議論するための手紙ではありません。「お子さまの命を守るためです」と言い続けるためのものです。心配している保護者はいるのですから。できれば、自園の判断基準(上記)も書いたほうがいいでしょう。

●環境省の暑さ指数(WBGT)。地図をクリックしていき、近くの観測地点のWBGTグラフを見てください。明日の予報はあくまで予報なので、毎朝、確認を。

●気象庁の高温注意報

●暑さ指数と湿度の関係(こちらの表)。「気温が下がったから大丈夫!」ではありません。湿度が上がればWBGTは上がります。

毎正時の観測地点の気象状況。観測地点によって何を測っているかは異なります。

全国の観測地点の状況(下にある地図を見ると過去1週間分が見られます)。見落としがちですが「最低気温が上がっている」という点も健康影響という点からは重要です。

全国の一覧表

●暑さ指数が「危険:31℃以上」であれば、プール活動も水遊びも中止(運動に関する指針)。

●救急医学会が出した「熱中症予防に関する緊急提言」危険を一番明確に表現しているのがこの提言です。特に、学校の部活動のリスク(冷房のない体育館等)を懸念している方は、これをご活用ください。

●文部科学省が出した通知

プールの中でも熱中症は起きます。すでに2015年にはこのようにニュースに載っていました(1-3の1項め)。今、ニュースになっている「気温+水温>65度以上」(下にニュースあり)は危険、というのは、このあたりからわかっていたのでしょう。

●水や麦茶のかわりに子どもにスポーツドリンクを飲ませたほうがいい? 1-3の2項め

園児にどれくらい水分をとらせたらよい? 体重あたりの数字ならこれです(なんと、看護師の国家試験のサイト!)。でも、食事やミルクから水分を摂っていますから、この量を水や麦茶として飲め!ということではない。では食事が何割?かというと、日本の食事の場合、まだわかっていないそう(「水は1日どれくらい飲めばいいのか」の項)。確かに米国の食事にはスープの類がついておらず、煮びたしのようなものもないので、食事から摂る水分割合は低そうです。検索すると飲料企業の記事は出てきますが、企業の言うことは耳半分で聞くべき。厚生労働省(「水を飲もう」運動)や環境省(「熱中症マニュアル」III-2)はというと、「適度に」「ひんぱんに」ばかり。小児科学会は検索にひっかかってこず…。(8月8日)

●日射で高熱となった遊具によるやけどについて、東京都が注意喚起(表面温度の写真あり)。

熱中症マニュアル(環境省)

熱中症.com。倒れたりしたら救急車!ですが、予防レベルであれば首、わきの下、鼠径部に保冷剤がよいようです。保育士さん、調理師さんたちも保冷剤または濡れタオルを凍らせたものを首に…。このサイトは他にも情報満載です。

●長野県・佐久医師会「教えて! ドクター」の「熱中症」。保護者向け情報提供に最適。ただし、裏面の「暑さに慣れさせる」は、毎日30~35度(以上)になるような現状において掛札は賛成しません。

●消防庁の「熱中症による救急搬送人数」。下の週報をクリックすると、年齢区分別(新生児、乳幼児等)の搬送人数もわかります。


報道と周辺情報

「エアコンと汗腺 ホントの関係は?」(7月30日、NHK)。とはいえ、上の「考え方」に書いた通り、「寒すぎる」のは別の話でしょう。記事に出てくる「能動汗腺」の話については、下の「暑熱馴化」の論文、特に長期暑熱馴化の部分にも書かれています。

●人間が冷暖房なしで快適に生活できる気温・湿度範囲(安全域)は限られています。米国NASAの「気温・湿度と人体の関係」に日本語をつけて画像化しました。すでに日本列島の大部分の夏期は、冷房を前提にしないと居住できない環境です。なぜ、NASAがこのような研究を? 月や火星に行くことを考えたら必要な研究です(「極地研究」と呼ばれる分野)。

●暑熱馴化(暑さに慣れる)ことについて書かれたまとめ論文。長期暑熱馴化(暑い場所にずっと住んでいることで起こるもの)と短期暑熱馴化(涼しい季節から暑い季節に向けて起こるもの)の違いが説明されています。最後に「安全側の配慮として、暑熱順化が起きていない ことを前提とした議論を行うことが妥当であると考えられる」と書かれていることが重要です。馴化したかどうかは、外から見ても本人に聞いてもわかりませんから。また、これまで涼しかった地域の場合、もともと暑い地域に比べ、長期暑熱馴化のレベルは低いということになります。

●この暑さが「昔とは違う」ことをわかっていただくために:気象庁の「過去の気象データ」ページから、このデータを引き出せます(これは東京の場合)。この東京の表で「気温」の「平均」の下の「日平均(年間の平均気温)」「日最高(最高気温の年平均)」「日最低(最低気温の年平均)」、及びその隣の「最高(その年の最高気温)」を見ながら下に下がります。着実に上がっていることがおわかりいただけると思います。自分の地域を見たい時は、こちらのページの左で「都道府県を選択」し、出てきた地図から観測地点を選択し、(元のページに戻ったら)右にある「データの種類」で「年ごとの値を表示」を押してください。ただし、19世紀後半からデータがある地点は限られますので、期間が短く、変化がわかりにくい地点もあります(近くの主要観測地点を選んでください)。また、日常、私たちがいる場所のほうが観測地点よりも暑いであろうことをご理解ください。

●「真夏日(30度以上)」「猛暑日(35度以上)」の増加をグラフ化してくださっている方がいました(この方は子育て関係でもいろいろなデータを「見える化」しています)。覚えてます? 昔は「夏日(25度以上)が続いた!」で騒いでいたのです。

●NASA制作「1880~2017年の地表面気温」(動画をクリック)。日本は右端、年は右上に表示。白が起点と同じ平均気温、青は低い年(~平均-2度)、赤は高い年(~平均+2度)。平均気温は上昇傾向。2017年の地球の平均気温は1950~1980年の平均に比べ0.9度上がっただけですが、1度上がることで熱波・豪雨といった極端な天候の増加、海面上昇、作物収量の減少、海面上昇など大きな影響が出ます。

●環境省の『地球温暖化と感染症』、日本への影響も。発行年が書かれていないのですが、2010年頃かそれよりも前でしょう。

●気象庁:この暑さは「1つの災害と認識」

●記事「プールでも熱中症対策を」。「気温+水温>65度は危険」が記載されています。「水泳をするわけではないから」…? 子どもはおとなより脆弱です。

●NHKのニュース「猛暑 プールでも熱中症に注意 使用中止の学校も」。…「それならやめようか」というあなた。これまでの情報でやめず、「NHKが言うから」「学校がやめているから」でやめるようなら、大災害の時など、自分で判断すべき時にできないかもしれないという危機感をお持ちください。

●子どもは地面に近く、体温調節もうまくいかないので「気温+5度で判断を」