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1-3. 安全に関する小さなトピックス


●「スマート睡眠モニター(センサー)は推奨せず」と、2014年のBritish Medical Journal(イギリス医学ジャーナル)の論説(英語)が発表しています。これは次々に発売されているOwletMimoSproutling(いずれも画像あり、英語)といったいわゆる「家庭用スマート睡眠モニター」について、「医療機器としての承認を受けておらず、『SIDSを予防できる』とする宣伝には根拠がない」としたもの。同様の勧告は、全米小児科学会の作業委員会が2011年(英語)に出しています。記事は2014年11月19日のTIME誌(英語)。スマート睡眠モニターは、まだ日本では販売されていないようです。ちなみに「ベビーセンス」は日本では「高度管理医療機器」として販売されていますが、米国等では指定なくアマゾン等で売られています。(2016年5月4日)


●乳化剤や安定剤としてよく使われる「カゼインナトリウム(カゼインNa)」は、乳由来です。ハム、ソーセージや練製品、離乳食等には結着剤として、シリアルや離乳食等にはタンパク質栄養剤としても使われています。消費者庁が平成22年に出した『アレルギー物質を含む加工食品の表示ハンドブック』で、「カゼイン」を検索してみてください(カゼインナトリウムとカゼインNaの表記があるため、「カゼイン」で検索)。これを見ると、特にキャリーオーバーのものは表示抜けもありそうです…。「乳化剤」「安定剤」「結着剤」といった表記にも注意が必要かもしれません。


●「この子は食物アレルギーだと思うのだけど、保護者は『(かかりつけの)~先生が、大丈夫、様子をみましょうと言っています』と繰り返すばかりで、除去の相談にものってくれない」、そんな声をよく聞きます。小児科医だからといって、食物アレルギーに詳しいとは限りません。日本アレルギー学会のこちらのサイトでアレルギーの専門医である小児科医を探し、保護者に紹介してみては? あるいは、エピペンを出しているファイザーのサイトでも、各種の専門医を検索することができます。

 エピペンをいつ打つかについては、日本小児アレルギー学会が出したこちらの情報をもとにしてください。この一覧が出た2013年7月24日の記事には、次のように書いてあります。
 「この一覧を作った作業班委員長の国立病院機構相模原病院・海老澤元宏医師は、『エピペンはほとんど副作用がない上、威力は強い。ひとつでも症状が出たら、迷わず打ってほしい』と話している。アナフィラキシーショックを起こしても、30分以内にエピペンを打つなどの対応をすれば、多くの場合、救命できる。
 この一覧が出た背景には、2012年12月に調布市の小学校で起きたアナフィラキシー死亡事例と、その後の、この報告も関連しているようです。
 「厚生労働省研究班の調査から、エピペン処方医(日本アレルギー学会専門医の中で処方医として登録)の25%が使用のタイミングを誤解していることが明らかになった。すなわち、『血圧低下や意識消失等のタイミングに使用』と回答した医師は75%のみ。同じように患者に指導している医師は64%に過ぎず、患者にも『手遅れ』となりかねない誤った情報が発信されていることがわかった。(朝日、5月2日) 」

 2013年の春の時点と比べ、エピペン処方医の認識が上がったかどうかは調査がありませんけれども、専門医でも誤解をしているのですから、専門医ではなければ子どもの食物アレルギーについて異なる認識をしていて当然と考え、現場で対応したほうがよいでしょう。まずは、「心配なので、ぜひ一度、専門医を受診してみてください」と。

 その他、食物アレルギーをめぐって2013年に起きたさまざまな動き、事例については、こちら(「ニュース」の2013年)や、「ニュース」の各年の「アレルギー」の項をご覧ください。(2015年8月5日)


●ブログで、「今の季節、子どもの水分補給にはスポーツ・ドリンクのほうがよいのか」という質問をいただきました。
 日本小児科学会の公式の情報はありませんが、全米小児科学会は「(健康な状態にある)子どもにスポーツ・ドリンクやエナジー・ドリンク(カフェインの入っているもの)を与えてはいけない」と2011年に勧告(英語)しています。熱などの時も、経口補水液であって、スポーツ・ドリンクではありません。一日に必要な(許容できる)カロリー、糖分、電解質などは食事で摂られており(摂られているはずで)、そこにスポーツ・ドリンクを飲むことは、健康にとって決して良くないようです。

 日本の情報で一番わかりやすいのは、日本小児歯科学会のこの提言でしょうか。転載します。
1)乳幼児に対して
 ・過激な運動や極端に汗をかいたとき以外は、普通の水を与える。
 ・イオン飲料を水の代わりに使用しない。
 ・下痢や嘔吐でイオン飲料を飲ませたときは症状が軽快したら中止する。
 ・のどが渇いたときは普通の水を飲ませるようにする。
 ・ 寝る前や寝ながらイオン飲料を与えないようにする。夜中にのどが渇いたときには水を与える。
 ・入浴後は水を飲ませる。
 ・寝る前に歯を磨く。やむを得ず、寝る前や寝ながら与えるときは水を飲ませる。あるいは、与えた後に綿棒や指先にガーゼを巻き口腔内を清拭する。
2)学童に対して
 ・運動で汗をかくときはイオン飲料を薄めて飲み、運動が終わったら普通の水を飲む。
 ・ペットボトルの飲料を持ち歩いていつも飲む習慣や、食事をしながらイオン飲料を飲む習慣を付けないようにする。
 ・のどが渇いたときは水を飲む。

 もうひとつ、2013年のニュースに掲載した関連情報です。
 乳酸菌飲料、果汁飲料、スポーツ・ドリンクなど酸性(乳酸、炭酸、ビタミンC、かんきつ類に多く含まれるクエン酸等)の飲み物を水筒に入れておくと、水筒に使われている金属が溶けだすことがあり、金属によっては中毒を起こす可能性もあるとして東京都福祉保健局が注意を求めています。特に、容器に傷がついていたり、酸性飲料を長時間保管するなどすると金属が溶け出す可能性が高くなるそう。同局のページには、注意点、事例、注意を呼びかけるリーフレットも掲載されています。保育園でも、家庭でもご注意を。(2015年8月2日)


●2015年8月11日の「47ニュース」に、プール関連の「混ぜるな危険」のニュースが載っていました。プール水の消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム)と、浮遊物や濁りの除去薬(ポリ塩化アルミニウム)が混ざると消毒薬が分解して有害な塩素ガスが発生するそう。7月には山形市の小学校で、塩素ガスを吸い込んだ2人が一時入院したということで、注意を呼び掛けています。記事はこちら〔掛札コメント〕 家庭用の塩素系消毒薬等には「混ぜるな危険」と書いてありますよね…。保育園等の次亜塩素酸のボトルには書いてなかったでしたっけ? 薬剤名を明記しても、作業手順を明確化しても、「間違って混ぜる」という行動は発生しますから、赤で「混ぜるな危険」と書いておいたり、ドクロのマークを書いておいたりするのが一番良いかと…。事故予防の分野では、ラベルの色やマークの効果がずいぶん研究されていますが、目立つ赤色の大きな字の「混ぜるな危険」は今までの研究からすると、まあ、効果的だと考えられます。(2015年8月12日)


●2015年8月5日の日経新聞に、プールや海で起こる熱中症に関する記事が掲載されていました。記事に出てくる永島計・早稲田大学教授(体温・体液生理学)によると、「浮力が働く水中では、体内の水分の圧力を基に脱水状態を監視する体の機能の一部が働きにくくなり、汗をかいても脳が感知しにくい。また、水中では、汗の蒸発作用(体温を下げる)が働かず、体温調節がスムーズにいかない」とのこと。また、「水温が33度、34度以上になるような状況は、運動には適さない」とも。水の中でも、炎天下は特に危険。そして、水分補給、休憩をとり、水温が高ければ運動を避けるべき、のようです。(2015年8月12日)


安全マニュアルや食物アレルギー対応マニュアルの中に、「ちょっとの~なら、~をしてもよい」「できる限り~する(しない)」「できれば~する(しない)」「なるべく~する(しない)」といった文言を見ることがあります。これらはマニュアルでは不可です。なぜなら、こうした言い回しは、個人によって判断が変わってしまうからです。Aさんにとっては「かなりの量」が、Bさんにとっては「ちょっとの量」になり、「これぐらいなら大丈夫だよね」という判断ミスのもとになります。「マニュアル」は、あくまでも「こう」と決めるもの。だいたいの枠組みを決めるなら、それは「ガイドライン」です。そして、特に深刻事故を予防する手立てに関しては、職員によって判断が変わってしまわないよう、「必ず」「絶対」といった言葉を使ったマニュアルを作ってください。(2015年7月26日)


●台風が通り過ぎました。連休中のイベントを中止した園もあるでしょう。結果的に、台風の影響はたいしたことがなかったかもしれません。そうすると、「これなら中止しなければよかった」と職員の方も保護者の方も言うかもしれません。でも、それはあくまでも「台風が大変なことにならず、何も起きなかったから言えること」です。「もしかしたら大変なことになっていたかもしれないんだから、中止して正解だったね」と話しましょう。今回は大丈夫だっただけ、なので。まして次回の台風の時に、「前の時は大丈夫だったんだから、今回も大丈夫だよ」は危険です!(2015年7月16日)


2014年のデング熱感染事例について東京都健康安全研究センターの研究者がまとめた論文が出ました。この論文にもありますが、デング熱を媒介しているのは、ヒトスジシマカ(ヤブカ属)のようです。ですから、忌避剤を使う場合は、必ず「蚊」に効くことを確認してください(ディート剤については2つ下をお読みください)。ハーブ類などの「自然のもの」を使っているからといって、かぶれたりしないわけではありませんから(かぶれには個人差もあります)、効果があって、子ども(たち)にとって害の少ないものを選んでください。園で忌避剤をしみこませたテープ等を使う場合は、保護者に事前に通知したほうがよいと思います(自然/化学物質曝露によるかぶれ等のリスクよりも、蚊に刺されるリスクのほうを選ぶ方もいるでしょうから)。
 蚊取り線香は「自然の成分」と思われていますが、蚊取り線香の大部分は電気蚊よけマット等と同様、ピレスロイド剤と呼ばれる人工成分を使っています(ピレスロイド剤はいくつもの異なる化学物質の総称ですので、製品に必ずしも「ピレスロイド」と書いてあるわけではありません)。除虫菊の天然成分はピレスリンです。ピレスロイド系物質とピレスリンの健康影響については、まだ結果が確立していないようです。特に、日本の家屋の夏のように、ある程度閉じた屋内環境で長期曝露する場合の検討は、私が探した限り、みつかっていません。
 また、蚊取り線香も電気を使う忌避剤も、喘息発作のきっかけになる可能性があるようですので、こちらも気にとめておいてください。(2015年8月)


「やけど虫」の被害が広がっているそうです(神戸市北消防団山田支団鈴蘭台分団のFacebook、2014年)。


●2013年のニュースから再掲: 蚊よけ、虫よけ製品に使われているディート製剤(ジエチルトルアミド)は、一度、臭いに曝露した蚊には効果が下がるという研究結果を、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の研究者が発表した。一度曝露すると、成分への感度が下がり、(簡単に言うと)「蚊は気にしなくなる」ことがわかった。ディート製剤を含む蚊よけ、虫よけ製品の子どもへの使用については、厚生労働省のこの文書の5ページ目を参照。
 また、各種の虫よけ剤(ぶら下げるもの、手足にするもの、パッチ等)については、ヒトを刺す種類の蚊にはまったく効果のないものも多数あります(ディート剤はヒトを刺す蚊に効果がありますが、子どもへの使用には上記のように制限があります)。今年2月には、消費者庁から効果表示に関する措置命令がメーカーに対して出されています(ニュースのページにあります)。製品を購入・使用する時は表示をチェックして、効果の対象となっている虫を確認してください。(2015年7月)