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3-3. 睡眠中に亡くなったお子さんのお母さまからのメッセージ


 2016年3月、保育施設で亡くなったお子さんのお母さまから、メッセージをいただきました。ご本人の許可を得て、掲載します。「こんなことを言われたら、怖くて保育なんてできない!」とお思いになる方もいらっしゃると思います。でも、保育者は本当に「小さな子どもの命を預かり、保護者と共に育てていく大切な仕事をするプロ」なのです。「子どもが好きだから」だけでできる仕事ではないと、保育士経験の長い方たちは皆、おっしゃいます。保育現場で働く人にはこれだけの「覚悟」が必要であり、社会もその覚悟の上に働いているプロを名実ともに「保育のプロ」として扱う義務があります。

 このお母さまはやりとりの中で、「すばらしい保育士さんもいる。しっかり取り組んでいる保育園があることも知っている」とおっしゃっています。けれども、いまだうつぶせ寝をさせる保育士が少なからずいる、そうした人たちに向けたメッセージとして頂戴いたしました。うつぶせ寝をさせない、睡眠チェックを確実にする(「睡眠の安全」3.1)。お願いいたします。(2016年5月22日。5月25日にお母さまからのご要望で一部修正しました)



お母さまからのメッセージ

 「2016年3月11日、東京都内の認可外保育所で死亡した1歳2か月の子どもの母親です。息子の事故に関するコメントに事実に反する点があり、どうしても訂正して頂きたく、ご連絡申し上げました。

 息子が「うつ伏せだとよく寝る」とありましたが、これは園長が「うつ伏せだと安心するようだ」と思って他のスタッフにそのように言ったことに端を発しております。家ではうつ伏せで寝たことがなく不可解に思い、私が他のスタッフに聞き取りをしたところ、非常勤の一人は「うつ伏せはさせてはダメ」、常勤の一人は「うつ伏せにさせたことはなく、横向きが落ち着くようだと思った」と言っています。そのような回答があったため、「では、うつ伏せ寝をしていることを何回見たことがあるか」と聞いたところ、1回?のようでした。

 そして、当日は月に1、2日しか来ない臨時職員が園長の指示通り、うつ伏せで寝かせたとのことです。まだ遊びたくて(手足を)バタバタするので大丈夫かなと不安に思いつつも、「時間がかかるけど、背中をさすりながら寝かせて」と言われ、従ったそうです。

 当初の報道には、他にも事実と異なる点があります。

 息子が寝ている2時間の間、呼吸確認は一度もされていません。というか、部屋に人がいませんでした。

 救命救急研修は、誰も受けたことがなかったとのことです。

 そして、東京都はNHKから取材を受けて慌てて行政指導を出したようです。東京都が行った記者会見は、NHKが息子の死亡について報道したことを受けて急遽夜に行っています。

 海外の健康に関連する省庁が出す情報には、at the start of every sleep(寝かしつける時は特に)うつ伏せ寝にさせてはいけないと明記されていますが、日本ではこうした具体的な注意が一切書かれていません。そして、「1歳2か月であれば寝返りが打てるはず」という思い込みもあるようです。

 息子には顔に溢血点があり、顎首に剥離が多数ありました。寝返りが打てない体勢でした。解剖の結果はまだ出ていませんが、「死因がわからない」「原因不明の突然死だ」とされることがないようにとせめて祈るしかありません。欧米豪では、子どもの死因を詳しく調べるようになっており、「原因不明の突然死」とされる死亡は年々減っています。また、SIDSとされている中に窒息が多いこともわかってきています。

 うつ伏せ寝がよいと信じるなら、自分の子どもやお孫さんでやってください。他人の子どもを危険にさらさないでください。それでもうつ伏せ寝にするなら、自分の子どもや孫に対してだったらするように、片時も目を離さず、ずっと注視して、首が少しでも動いて呼吸が苦しそうだったら、死ぬ前に体勢を変えることを絶対にしてください。それで子どもが死んだらその後ずっと殺人者として生きていくことを覚悟して、うつ伏せにしてください。

 息子の死をせめて教訓にしてください。」



当初のニュース

 お母さまがメッセージを送ってきてくださった理由は、「ニュース」ページに掲載した下のニュースでした。

 「東京都中央区にある事業所内保育施設(認可外、7企業が共同で従業員のために設置)で3月11日午後2時過ぎ、1歳2か月児が心肺停止状態となり、搬送先の病院で死亡が確認された。児はうつぶせ状態で2時間以上寝かされていたが、呼吸の確認は十分に行われず、人工呼吸などの救命救急措置もとられていなかったという(救命救急研修を受けた職員は1人)。当時、施設には子ども20人に対し、保育士等4人を含む合わせて6人の職員がいた(都の認可外保育所基準を満たす)が、安全管理体制に問題があったとして、都は運営会社(全国で33か所の保育所を運営)に対し、改善を求める行政指導を行った。
 死亡した児の母親によると、育児休業を終え、仕事復帰のため3月に向けて自宅近くにある6か所の認可保育所に申し込んだものの、すべて入れなかった。唯一空きがあった認可外施設に預けることを決めたという。事故後、施設側から当時の状況を聞いたところ、児は慣れない環境でよく泣いていたため、昼寝の際は一人だけ、他の子どもたちとは別の部屋で寝かされていたことがわかった。「よく寝るから」とうつぶせのまま寝かされていたが、呼吸の確認をほとんどしていなかったことについて保育士の一人は、「他の子どもたちの世話で手いっぱいだった」と説明したという。母親は「忙しいから事故が起きたと言われても許すことはできません」と話していて、事故の検証を東京都に申し入れることにしている(NHK他、4月12日)。」

 この「よく寝るから」が、このお子さんに関する事実であるかのように書かれていることに対して、「修正を」とのこと。ですから、この箇所は、
「そのほうがよく寝るから」という園長の指示でうつぶせのまま
が正しい表現です。

 他の赤字の箇所も、お母さまが確認した事実とは異なる報道のようです。「呼吸の確認はまったくしておらず(部屋に誰もおらず)」「救命救急研修を受けた職員は一人もいなかった」。


お母さまが訳してくださったSafe to Sleepの情報

 掛札が一部翻訳をした米国国立衛生研究所の「Safe to Sleep」の情報を、お母さまが訳してくださいました。こちらにPDFで置いてありますので、お役立てください。