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3-5. 睡眠中の命を守るためのクラス掲示(2016年9月7日、14日)


監査等で「睡眠チェック表は一人ひとりつける」よう指摘されるかもしれません。3-1-3) に書いたように、一人ひとりのチェック表は現実的ではありません。このような手間のかかることを要求されれば、実際にはチェックをせずに後でチェック表だけを埋める「空チェック」が増えるだけです。説明しても「できるでしょう」「しなさい」と言われたら、する以外にありませんが…。今まで多くの自治体が「睡眠チェック」と言いもしなかったのが、突然ここへ来て「一人ひとりつけろ」というのは、あまりに理不尽です。(2016年9月9日)

(2016年9月14日)

言わずもがなだと思っていたので書きませんでしたが、ゼロ歳児は全員が一斉に眠るわけではありませんから、眠っている間に定期的にチェック、チェックした時間と子どもの状態を書けばよいと思います。
自治体によっては、一人一人のチェック表に最初から時間(5分ごと、10分ごと)が印刷されているものもあるようです。これは、自治体に言って変えるべきです。その間隔で、その時間以内にすることなど、(一人ひとりをさわりながらきちんとチェックしていたら)不可能です。空チェック、嘘記入を増やすだけです。
一人ひとりのチェック表を使っている場合、朝、または午睡前に必ず、「今日は休みの子」の欄にはっきり横線を入れておいてください。誤ってその欄にチェックを入れてしまわないためです。

昨今の報道を読んで、「子どもがうつぶせ寝の状態で亡くなったとしても、『あおむけだった』と言えばよいのだ」と考えた方もいるかもしれません。解剖などをして調べればわかり、「事故(過失)」だったはずのことが「事件(意図)」になるだけです。また、「嘘をついた」という罪悪感は一生ぬぐうことができないということもお忘れなく。チェック表も空チェック、さわって確認もしていない、それで子どもが亡くなって「あおむけ寝でした。チェックもしていました」と言えても、保育者の心には「なぜ、ちゃんとしなかったのか」「なぜ、嘘をついたのか」という傷が一生残ります。これが、どの園でも、いつでも、突然起こりうるのだということを運営者も保育者も考えてください。


「睡眠中の安全は?」と保護者は尋ねたい

 私(掛札)が研修で「うつぶせ寝をさせないで」「睡眠チェックをして」とお話ししても、それまで取り組んでいなければ、そして特に保育士さん(リーダー層ではなく)が参加する園外研修の場合には、内容が園に持ち帰られることはあまりないでしょう(「いかに持ち帰られていないか」は、研修を繰り返している自治体等で痛感しています)。たとえ園長やリーダー層が聞いても、内容を現場におろすことはなかなか難しいようです。

 でも、もうそんなことは言っていられません。昨今の睡眠中の死亡報道を受けて、「うちの園は、あおむけ寝、睡眠チェック(※)をしているのかな?」と考える保護者も増えてきているようです。園見学などで、実際に尋ねられるケースもあります。「なんのこと?」という顔をしたら、それだけで信頼の最初の一歩を失う可能性があります。「尋ねたいけど、ちょっと…」という保護者はもっとたくさんいるでしょう。「寝た子を起こす必要はない」ではありません。保護者の多くは「目覚めて」います。保育園がしっかり取り組んでいることを、先んじて示す必要があります。

保育者の習慣になるまで、「思い出しの鍵」が必要

 一方、忙しさにまぎれて、つい忘れてしまう、やらずにすませてしまうのが、睡眠中の安全確保です。人間は「私(たち)は大丈夫」と思ってしまう「楽観バイアス」(認知の歪みのひとつ)を持っていますから、目先の連絡帳や製作が先!と思ってしまうのも当然。でも、その間に子どもの呼吸が止まっていたら? 心臓が止まっていたら? 気づくのが遅れたら? そこにいた保育者は一生、後悔するでしょう。社会的責任も問われかねません。

 そこで、この掲示です。クラスの目立つ場所に貼っておいてください。子どもを預けている保護者にも見え、園見学の保護者にも見え、保育者にも見える場所に、です。保護者に対しては安全の取り組みの説明になり、保育者にとっては「あおむけ寝、睡眠チェックだよね」という思い出しの鍵になります。誰でも、忘れそうなことは、メモに書いて目に見える場所に貼っておきますよね。それと同じです。頭の中で「しなくちゃ」と思っていても、他の考えや用事に流されて忘れてしまうのが人間です。習慣になるまでは、この掲示を見て、「あおむけ寝、睡眠チェックだよね」と繰り返してください。

 保護者や園見学の方から「お昼寝中は?」と尋ねられたら、この紙を示して「このようにしています」と説明しましょう(解説は、3-1-(3)をお読みください)。「このようにしています」と口に出すと、「しっかり取り組もう」という気持ちにもつながります。「~しています!」「~します!」と言葉に出して宣言することは、人間が行動を変え、行動をつくっていく上で大切な鍵でもあることが、健康心理学の知見から明らかになっています。

※睡眠中の死亡は必ずしもSIDS(死後に調べても原因がわからない死亡)ではありません。窒息や感染症等(原因がある死亡)もあります。なにより、SIDS自体をチェックすることはできません。では、何をチェックするのか。「呼吸」だけではありません。体温が上がっていないこと、からだが普通に反応することなどもチェックしています。ですから、「SIDSチェック」でも「呼吸チェック」でもなく、「睡眠チェック」という言葉をここでは使っています。


クラス掲示

 クラス掲示はすぐに使っていただくため、ワード文書になっています。「ワードでは見られない」という方もいらっしゃるでしょうから、PDFもこちらにあります。4ページ、計5種類あります。ゼロ歳児のものは、「午睡」を「睡眠」と書き換えてもかまいません。

 大事な点は…。

1.「●分間隔でします」と簡単に書かないこと。うつぶせをひっくり返し、睡眠チェックをすることが重要なのですから、しっかり取り組んでいれば間隔が超過することもおおいにあります。間隔が厳密かどうかは、まったく意味がありません。「確実にすること」が大事なので、「●分を目安として」と書き、「実際にチェックした時間を記入する」ことです。子どもが少なく、一周しても十分に余裕があるのであれば、「3」の文書を使ってください。

2.「ノート書き、製作が忙しくて…」という時は、こちら(B-1の中の手紙「睡眠中の安全確保をするために」)を使って保護者に伝えるのも一策でしょう。

3.「この項目は、うちの園には該当しないから書かなくてよい」という内容もあるかもしれません。けれども、書かなくてよいと決める前に「3-1. 睡眠中の安全」をお読みになり、「これは本当にしなくていいのかな?」と考えてください

4.最後の「専門家」云々は、なんらかの理由でどうしてもあおむけに慣れない子どもがいる事実に鑑み、加えてあります。最初の項目で「医師からうつぶせ寝を勧められている場合を除く」と書いてあることとつなげ、「医療や発達の専門家と連携して子どもを預かる」という園の姿勢の表明にもなります。