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D-1. クライシス発生時の初期対応:新型コロナウイルス感染が起きたら

(2020年4月16日更新。宇於崎裕美/エンカツ社)

もし、新型コロナウイルス感染が発生してしまったら

 先月(2020年3月)、園児や職員が新型コロナウイルスに感染してしまったときの対応について、「行政との連携を強化する-感染者情報についての記者発表は行政の役割」と皆さんにご説明しました。ところが、昨日(4月15日)、「横浜市の私立保育園で、保育士が新型コロナウイルスに感染していたにもかかわらず、市が感染の事実を保護者に伝えないよう園に求めていた。市の担当者は保護者の心配な気持ちへの配慮が不十分だったと述べた」(時事ドットコムニュース 2020年4月15日12時45分)との報道があり、驚いています。

 新型コロナウイルスに関しては、情報が錯そうし、行政側の業務も膨大で担当者が適切な判断を行えない状況に陥ってしまうこともあると思われます。そんなこともあるからこそ、園は「自分たちの責任は何か? 何を守らなくてはならないのか?」を考え、主張すべきことは主張しなくてはなりません。

 横浜のケースでは、当該保育園側が市に対し休園を主張し、保育士の感染については園の判断で保護者に連絡したとのこと。立派な判断だったと思います。

 さて、もう一度、新型コロナウイルス感染が発生したときの情報公開のやり方について、整理します。前回、私は「クライシス・コミュニケーションの三原則」、

1)誠実第一主義に基づいた情報公開
2)明確な方針や戦略が重要
3)知識やスキルより意識

を挙げ、何よりも「情報公開により隠ぺいを疑われないようにしなくてならない」と、お伝えしました。また、「行政との連携」の重要性を強調し、

・感染者情報についての記者発表は行政の役割
・園として守るべきこと(上記)を行政側に伝え協力要請
・深刻な事態発生時の対応をあらかじめ行政と協議

と考え方や方針をご説明しました。では、実際にはどうすればよいのかということを、今回、ご紹介します。

1.一般市民から感染者が出たということを発表するのは行政の役割であることを確認

 PCR検査の結果、陽性者が出たということを“最初に”“公式に”発表するのは行政の役割です。これを園がやる必要はありません。

2.感染者が出て“組織の業務に影響があること”の発表ルールの策定

 たとえば、保育士が感染者で、そのために他の保育士が濃厚接触者となって自宅待機しなくてはならなくなり休園することになったなど “園児や保護者に影響が出る”のなら、保護者に早く知らせたいですよね。

 ここで提案ですが、感染者が出る前から行政と保護者への連絡ルールを決めておかれてはいかがでしょうか。

 私は仕事柄、さまざまな修羅場に立ち会い、組織の説明責任をどう果たすかについてアドバイスしてきました。いつも困るのは、「準備ができていないと当事者は混乱する」ということです。いきなり事件・事故が起こると、人は物事の優先順位が正しくつけられなくなるのです。「それ、今じゃなきゃだめ?」と関係者同士で大ゲンカになってしまうこともたびたびです。気が動転しているとどうしてもそうなってしまうんですね。だからこそ、事が起こる前に、発表ルールを決めて明文化あるいはマニュアル化しておくのがよいのです。

 外部に説明するときは、感染者のプライバシーに配慮してください。感染者本人の行動の詳細を保護者に説明する必要はありません。説明のポイントは、

・園児や保護者にどのような影響が出るのか(おそれがあるのか)
・園としてどういう対応をするのか
ということです。

 情報公開の仕方は、説明すべき対象者の範囲により変わります。

・不特定対数に説明しなくてはならないとき:記者会見、プレスリリース、HP掲載
 (院内感染が発生して診療を制限しなくてはならない病院など)
・特定の関係者だけでいいとき:組織内文書、関係者へのメール
 (ほとんどの保育園の場合)

 新型コロナウイルスについては、誰もが未経験で何が正しいのか迷うことが多いと思います。そんなときには、自分たちの「本来の責任は何か」ということに立ち返ってご判断ください。

クライシス・コミュニケーションの三原則

 事故や事件が起きたときの説明を「クライシス・コミュニケーション」と言います。日本では、「危機管理広報」とも呼ばれています。私、宇於崎が推奨するクライシス・コミュニケーションの三原則は以下のとおりです。(2020年3月11日)

 1)誠実第一主義に基づいた情報公開

 2)明確な方針や戦略が重要

 3)知識やスキルより意識

 まず、1)隠ぺいを疑われないよう、情報公開をしなくてはなりません。保護者もマスコミも隠ぺいにはたいへん厳しいからです。次に、2)明確な方針を決め戦略を立ててください。知っていることを右から左に流すのではなく、「自分たちは誰に何を伝えなくてはならないのか。自分たちがこれを言うことでどんな影響があるのか。自分たちは何を目指しているのか」を落ち着いて考えてください。そして、3)知識やスキルも大切ですが、普段から“意識”を高めておいてください。つまり、社会でどんなことが話題になっているのか、保護者はじめ世間の人々が今、何に関心を持っているのか、どんなことに敏感なのか観察しておいてください。

 さて、今回の新型コロナウイルス問題について考えましょう。もし、園児や職員から感染者が出たときの対応については以下を提案します。

1. 対応方針を決める

 事態を受け止め、園としての方針を決めてください。そして、それを職員一同で共有してください。方針として、大切だと思われることを以下に記します。

1)何を守るのか明確にする

 ・園児と保護者、職員のプライバシーを守る
 ・通常業務の安全な遂行、保育の質を守る
 ・園の信頼を守る

2)行政との連携を強化する

 ・感染者情報についての記者発表は行政の役割(園ではない)。そのことを行政側に確認
 ・園として守るべきこと(上記)を行政側に伝え協力要請
 ・深刻な事態発生時の対応をあらかじめ行政と協議

3) 園でできることとできないことを選別する

 ・自分たちだけですべてやろうとしない
 ・できないことは外部(行政、プロ)を頼る
 ・保護者にも協力を依頼する

2. 園内感染者発生時の初期対応

 感染者や発症者が出た場合、保護者だけではなく地元の新聞やテレビ局から電話問い合わせがきたり、園の前にカメラマンが集まったりするかもしれません。そのときの対応については以下をおすすめします。

1)マスコミからの取材は受けない

 取材対応は園の義務ではない。「断る」という選択肢はある。

2)丁寧に断る

 出退勤時に園外でいきなりカメラやマイクを向けられてもあわてない。
 「申し訳ございませんが、私はお答えする立場にございません」と最大限の丁寧さで断る。電話やインターホンで断るときもゆっくり、丁寧に。クッション言葉(「申し訳ございませんが」、「お手数ですが」等)を忘れずに。この時の皆さんの声がそのままテレビで報道されてしまう場合もあるので要注意。

3)コメントを決めておき、余計なことを言わない

 「申し訳ございませんが、私どもからは園児ならびに保護者、職員のプライバシーについてはお答えできません。」
 「お手数ですが、その件は行政側(市、町等)へお問い合わせください。」
 「感染された方が一日も早く回復なさることを祈っております。」
 「私どもは行政と協力し感染拡大防止に努めてまいります。」

3. 集団感染発生時

 万一、集団感染が発生してしまった場合は、行政の指示に従ってください。

 保育園の運営者や保育士の皆さんは、とかく自分たちでなんとかしようする傾向があるようです。しかし、自分たちだけではどうにもならないことは世の中にたくさんあります。特に、新型コロナウイルスのような未知の感染症はそうです。ここは迷わず、記者対応など対外的な説明についても行政に対応をお願いしてください。「外部に頼る」というのも立派なリスクマネジメントです。くれぐれも自分たちだけで抱えこまないでください。

★参考:園のための危機時初動支援サービスをご活用ください★

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