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A-3. 重要事項説明書等に入れて、入園面接またはそれ以降に伝える文書

(2019年1月6日)

●伝える文書
●文書の解説
●全体について

(2018年1月26日の内容から大幅に変えてあります。ご参考までに古い版(A-0)はこちら。)

 こちらは、A-2の内容と、入園の段階で伝えるべき点を文章にしたものです。重要事項説明書には入れられなくても、園生活のしおりなどに入れ、3月、4月、入園の段階で保護者全員に伝え、紙面で渡しておくべきものです。園見学や面接の時に言葉で伝えただけでは、後で「お伝えしたことです」と言っても「聞いていない」と言われるだけです。そして、相手が感情的になっている時にくどくどと説明しても効果はないばかりか、「屁理屈」「言い訳」と思われて状況を悪化させるだけです。「~の時にお渡しした〇〇に書いてあります。~の時にもお話しもしました。どうぞもう一度お読みください」とだけ、冷静に言うために渡しておきます。

 そして、保護者に伝えたら、自治体にも「子どもたちのため、保護者にこのようにお伝えしました」と報告しておきましょう。「こんなことを園から言われた」と自治体に言う保護者もいるかもしれないからです。情報は常に、「先に、事実を、冷静に、伝えたものの勝ち」であることを忘れないでください。

 以下の文章はもちろん、園の判断で加除してくださってかまいません。私(掛札)が実例を通じて学んできた現時点で最大限の内容ですから、「ここまで書かなくても…」とお思いになる方もいると思います。実際には、「言い過ぎのようにも感じるけど、最悪の事態を予測して書いておいたほうがいい」と判断なさったほうがよいとは考えますが…。事態が起きてしまってから、「先に言っておけばよかった」では遅いので。

●●書く内容、ここから●●

お子さまをお預かりする上でもっとも大切な点

 『保育所保育指針』は「基本原則」の中で、「(保育所は子どもの)健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。」と定めています。そして、「家庭との緊密な連携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通して、養護及び教育を一体的に行うことを特性としている。」とも述べています。

 「子どもの最善の利益」を大切な基本とし、私ども〇〇園が〇〇様の大事なお子様をお預かりする上では、園と保護者様の間に長期にわたる信頼関係を構築していくことが前提となります。つきましては、集団の中でお子様をお預かりする基本として、以下の点をご理解ください。

1)園は子どもたちがそれぞれにかかわりあいながら、さまざまなことを試し、興味を広げ、育っていく場所です。活動に伴うケガ(顔や歯、目のケガ、骨折等も含む)、かかわりあいに伴うかみつきやひっかき、ケンカなどは起こります。子ども1人に保育士1人がついている状況ではありませんので、ケガを予防できないことも多々あります。

2)保育所は子どもが集団で過ごす場所であり、「子どもの最善の利益」とは、「保育所で過ごす子どもたちの最善の利益」でもあります。お子様は日々、集団の中で生活しているという点を認識していただき、集団保育や他の子どもたちに望ましくない影響が起こりうることはお控えください。
 例:医療・宗教上の理由がない特別扱い(食事、生活習慣、感染症発症時の登園、予防接種未接種等)はできません。園の敷地内、駐車場、行事の会場等では必ず安全のルールに従ってください。他の子どもたちや家族、園職員の写真等を許可なく撮る、撮った写真や個人情報等を許可なく使用するのは禁止です。

3)お子様をお預かりする上で重要な情報(例:家庭での発熱・嘔吐等の体調不良や家庭での投薬、ご家庭や登園中に起きたケガ等)は、こちらがお尋ねしなくても、必ず毎朝、事実をお伝えください。保護者の皆さまと園の間の信頼関係の基本となり、お子様をお守りする基本となりますので、事実を隠す、事実と異なることを伝える等はなさらないでください。在園中に発症した疾患、診断された疾患についても同じです。

4)お子様の成長・発達に関するできごと、私どもが気づいた点は、小さなことであっても明確にお伝えします。保護者の方にとっては、良いことばかりではなく、聞きたくないとお感じになること、認めたくないとお感じになることもあると思いますが、未就学期の気づき、特にご家庭の環境とは異なる(長時間の)集団生活の中の気づきは、お子様の育ちと将来に深く関わることも多々あります。どんな変化であれ、できる限り早く気づいて必要な対応をすることがお子様の将来の良い結果につながります。
 私どもが言葉で説明することが難しい場合、または言葉の説明だけでは状況をご理解いただくことが難しい場合には、必要に応じてお子様の様子をビデオ撮影します。映像は、保育士が対応を検討する目的と、保護者の方と自治体の発達支援担当者に見せる目的のみに用い、他の目的には一切使用しません。

 以上の点のいずれかにつきまして、「子ども(たち)の最善の利益」という目標を果たし得ないと考えられる場合、及び/または、園と保護者の間の信頼関係構築に支障をきたす場合、または支障をきたすと予測される場合には、園としても対応を検討させていただきますこと、まずはご理解ください。

●●書く内容、ここまで●●


上の文書の解説

 1)と2)の内容について詳しくは、A-2の通りです。2)にはもっとも重要なポイントを例示しました。予防接種に関しては、対話上は勧奨にとどめておいたほうが得策ですが、こちらには明確に書いておくべきでしょう。ここに書くこと自体が「勧奨」ですので。

 1)で(骨折等も含む)と書いてあるのはよけいだと思う方もいるかもしれませんが、6-1に書いた通り、ケガ(外傷)は確率的な事象ですから、誰にも非がない状態でも十分、骨折は起こり得ます。書いておかなければ「ケガ=すり傷、切り傷」程度の認識しか生まれません。

 2)で「宗教上」と書いていますが、宗教は「文化」でもあり、個々の事例の判断は容易ではありません。とても難しいので、ここでは「難しい」にとどめます。

 3)は言うまでもありませんが、実際、保護者が「隠す」「事実と異なることを言う」は多々あります。でも、それでは他人の子どもを預かることはできません。最悪の場合、「ケガ? 家じゃありません、園でしょう?」「家では元気でした。園のせいです」と、冤罪にすらつながりかねないからです。

 現実的な対策としては、B-1の「服薬や事故などについて毎朝、必ず伝えて」を必要に応じて掲示し(渡し)、受け入れの時に必ず、「体調はいかがですか?」「おうちではいかがでしたか?」と尋ねることです。目で見える範囲だけでも最低、確認して、ケガなどがあったら「これはどうなさいましたか?」と聞き、「ああ、じゃあ、様子を見ておきますね」と伝えましょう。気づかないでいて、後で「このケガ、園でしょう?」と言われないためでもあります(この大役を果たし、担任等に伝えるという重要な役割を果たす上でも、朝の受け入れは正規職員が「今日の受け入れ担当」を決めてするべきなのですが、朝晩の担当は非正規でもいいという流れがどんどん強まっています。これは子どもの健康・安全の上でも逆行です)。

 最初のうちは保護者が伝え忘れる、ということもあるでしょうから、「〇〇さん、お願いしますね。今度は伝えてください」とやわらかく伝えるべきだと思いますが、度重なる場合にはこの文章を再度示して、「このようにお伝えした通りです。お伝えいただかないと、私どももお子さまをお預かりするのが不安です」とはっきり言うべきです。それは保育士、園を守るためであり、もちろん、子どもの命を守るためでもあります(余談:保護者としては一度、職場に行かなければいけないという事情もありますから、「熱=預からない」ではありません。B-1の手紙/掲示にも書いた通り、知らなければ対応できない、対応が遅れる、ということです)。

 保育者、園がこうした点をはっきり保護者に言えば、自治体や本部(本社)などに「言いがかりをつけられた」というような内容の話が行くかもしれません。ですから、はっきり伝え始めたら先んじて必ず自治体の担当課(本部、本社)に報告、相談をしておきましょう。「隠す」「事実と異なることを言う」が事実であるならば、その事実を具体的に先に伝えておくことで、こちらの理を通すことができます。自治体(本部、本社)が「そんなことは言わずに、多少のケガや体調不良ならなにも言わずに預かっておいて」と言うこともあるでしょう。その時は、屈して預かることにするかもしれません。でも必ず、保護者の発言、子どもの様子、そして、「〇〇さんが『預かって』と電話で言った」「『それくらいのことで角を立てるな』と言った」を記録に残しておいてください。万が一の時のために。

 4)もA-2に書いた内容ですが、この時点ではもっと具体的に伝えることができますし、伝えておくべきです。「考えてみたら、ゼロ歳の時にすでに兆候は見えていた。もっと早く保護者に伝えておけばよかった」という話はあまりにたくさん聞きます。

 私(掛札)もこんなお話をします。「今、特に米国では1歳未満で自閉症を発見しようとしています。なぜかというと、自閉症は早く支援を始めれば始めるほど、後の発達に良い影響を及ぼすからです。もし万が一、その子が自閉症でなかったとしても支援自体は害になりません。その子が自閉症だったとしたら、支援は意味があります。だから、早いほうがいいのです。」

 「1歳未満で」と私が言うと、保育士の皆さんはびっくりして顔を見合わせます。でも、「ゼロ歳で『この子はなにか違うよね』って、先生方、おっしゃるじゃないですか」と私が言うと、皆さん、うなずきます。集団の中で子どもを毎日見ている保育士には、はっきり見えているのです。それを保護者に伝え、支援につなげる大切さです。今の時点では支援の専門家は足りないのでしょうけれども、需要が増えれば専門家は増えるでしょう(と希望的に推測します)。

 米国の、自閉症をみつける件については、そのうち「3000万語の格差」ウェブサイトに書くことにしますが、「伝えられる」とお思いになる保育士さんは、ぜひこの話を明るい一般論として保護者会などで話してみてはいかがでしょうか。これを聞いて「自分の子どもについて教えてほしくない」と言う保護者はいないはずです(ただし、実際になにかの課題が出てきた時に、保護者を説得する方法としてこの話をするのは絶対にやめてください。「うちの子が自閉症だと決めつけるのか」という話になりかねません)。

 もうひとつ、ビデオ撮影の件ですが、こちら(黒丸2つめ。内閣府のガイドラインのために掛札が書いた下書き)に書いた通り、少なくとも0歳、1歳のクラスにはビデオをつけておくことをお勧めしています。なぜなら、睡眠チェックをしていた真の証拠、あおむけに寝かせていた真の証拠、異常に気づいた時に迅速な対応をした真の証拠は、ビデオ映像でしか残せないからです。ビデオで撮っていれば、自治体等が無駄に煩雑にしている睡眠チェック表は本来、必要ないでしょう(近い将来、「睡眠チェック表はついているのに、うつぶせ寝で亡くなった=嘘チェック」という事例すら出てくるはずです)。まずこの点で、園が職員を守るためにビデオは不可欠なのです。

 保護者と保育士の両者にとって、ビデオ映像は役に立ちます。実際にビデオを園内各所につけている園の話ですが、たとえば「このケガはどうして起きた?」という時に、事実を確認する手段になるのです。「誰かにいじめられた?」「自分で転んだ?」「からだのどこをぶつけた?」「どうやって(プールに)沈んだ?」…、映像がなければまったくわからないままとなりかねないことが、映像があるだけで簡単に解決できるのです。ビデオがもともとある園なら、4)の最後は「映像をお見せします」で終わるでしょう。

 さらに、これは書こうかどうしようか悩みましたが、事故検証委員会にもかかわった経験からも、やはり書きます。たとえば午睡中やプール活動中に子どもが異常な状態になり、結果、亡くなったとします。プールはさすがにそのままでしょうけれども、午睡中のふとんなどはすべて警察が持っていきます。保護者はたいてい病院へ直行するでしょうから、死亡後に保護者が園に来ることがあるとしても、その時にはなにもない空っぽの部屋です。子どもの最期がどうだったのか、職員はどう対応したのか、その姿を唯一残せるのはビデオ映像しかありません。不慮のできごとで人が亡くなるもっとも悲しい一面は、「さようなら」を言えない可能性が高いことです(自分の側にはまったく落ち度がなく、その場で死んでいても不思議はない交通事故に2度遭った者としては他人ごとではありません)。でも、最期に過ごした姿、まわりのおとなが必死に対応した姿を家族が見ることができたら? 

 園内各所にビデオをつけている園は増えていますが、まだ多数派ではありません。ビデオがついていない場合には、4)の後半の部分を書き加えておく必要があります。そうしないと、「わざわざビデオを撮るなんて!」と言われかねないからです。でも、考えてみてください。いまどき、家を一歩出たらあちこちでビデオ映像を撮られています。問い合わせをした電話の会話は録音されています。それを「人権侵害」ととらえることもできますが、価値がないなら大金を投じてそんな機器を設置したりしないでしょう。ビデオを設置し、映像に記録しておくことには価値があります、園にとっても、保護者にとっても。
(ビデオはネットワークを要しない、本体SDカードにデータ保存するタイプでも十分です。)

全体について

 最後の部分の「園としても対応を」というのは、直接契約であるならば契約を拒否する、預からないと明言する。そうではないならば、自治体に報告し、協議していくといった内容を意味します。ただし、絶対に誤解しないでいただきたいのは、この内容は「園にとって都合の悪い保護者」「園にとって面倒な保護者」を排除するためではなく、あくまでも「子どもの最善の利益」を優先させるためだ、という点です。同時に、こうしたことが十全にできるよう、「保育士の質」を上げていく、ということでもあります。

 ですから、一方で、園が同じように「なんでも伝える」ことも重要です。単純な「〇〇ちゃん、これができたんですよ」「これで楽しく遊びました」ではなく、その子の「できないけど頑張ってトライしていること」「できつつあるけど、まだここがうまくできないところ」「できるようになったけど、こんなふうなひっかかりもあること」「できなくて、ここでいらだっているところ」といった内容(良いこと+ひっかかり=保育士が「子どもを伸ばす」ハシゴかけをする一番大事な専門性の部分)を伝えていれば、保護者にとってはケガもかみつきもひっかきもケンカも当然のことになっていきます。保護者の子育てにも役立つでしょう。

 ケガだけではなく、もちろん、ミスも伝えていきます。たとえば、「子どもを置き去りにしそうになりました」「誤食が起きそうになりました」「給食に虫が混入しましたが、子どもがみつけてくれました」…。「申し訳ありません。二度とこんなことがないようにします」という漠然とした、できるはずのない謝罪ではなく、「このような具体的な対策を立てて、できる限り防げるように取り組んでいきます」です。

 特に、「~しそうだったが、大丈夫だった」の時にこそ正直に伝え、具体的な対策を伝えることです(実際、「どう伝えればいいか」というご相談もいただきます)。これは「恥を自分からさらす」ことではありません。「失敗し(そうだっ)たけれども大事に至らず、具体的な解決策を考えられた。取り組んでいく」という前向きな宣言です(つまり、あくまでも伝え方の問題。できごとの内容ではなく)。「二度とこんなことがないように」という漠然とした精神論ではなく、「~のような行動をして、できる限り防げるようにします」という現実的な取り組みです。

 こうしたミスの報告は、保護者全員に掲示等でします。ネット上の情報拡散が速い現代では、尾ひれのついた情報が一瞬にして広がります。ネット上で嘘や噂が広がらないようにする最善の方法は、園(法人、企業)の責任者の名前で、すぐに、正確な情報(事実)を流すことです(「むやみに謝罪する」ではなく)。ですから、今日起きたことは今日の夕方、遅くとも次の日の朝までには掲示をする、保護者全体メールをするといった方法をとることが重要です。ケガでも、重傷になったものや遊具がらみのものなどは、他の保護者にも話が流れるでしょうし、対応について心配する保護者がいるでしょうから、同じように掲示等で伝えておくべきでしょう。

 信頼構築において重要なのは、お互いに事実を明確に伝え(「万人にとって正確な事実」はまずありえないので「正確ではないかもしれない」点も明確に伝える)、その事実に対する感情も冷静に伝える「正直さ」です。この正直さとは気持ちや「つもり」ではなく、行動としてそのようにする、ということです。

 もうひとつ、2)に関連することですが、今、受け入れが増えている医療的ケア児についてです。深刻事故予防の観点からすると、「その児に万が一の事態が起きた時、そこにいあわせた保育者、子ども(幼児)の心のケアをできる体制がない」ことが最大の懸念です。そのお子さんの保護者とその子どもをみている医師は子どもの予後についてある程度の現実的な予測をしているのかもしれませんが、保育者はそうではありません。お子さんが亡くなったりした場合には、医師にとってはそれが予測通りのものであったとしても、保育者は「私(たち)が悪かったのではないか」「なにかできたのではないか」と後悔します。まわりの子どもたちもショックを受ける可能性があります。そのケア体制をいっさい持たずに受け入れを進めることの危険性を考え、自治体にそれを明確に伝えるべきです。

 もちろん、看護師や保育士を加配するだけで、他の子ども全体の保育・教育に影響が出ない形の保育・教育ができるのか、という点も自治体に問うべきです。そして、配置にかかわる財政的・人的問題(はっきり言えば、加配の補助金)を考えるのであれば、医療的ケア児はまず公立園が受け入れるべきだと私(掛札)は考えます。

★ 保護者に保育を伝え、一緒に子育てをしていくという点では、「親心を育む会」が進めてきた「一日保育士体験」(マニュアルのPDFは、同会上記サイトの左側)がとても役立ちます。一日保育士は母親だけでなく、父親も対象です。



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