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睡眠の安全:2019年版


 睡眠中の異常は、いつ、どこで、誰に起こるかわかりません。だから、リスクを下げ、異常に早く気づくための行動をするのです。「大丈夫」を言いたいのは、誰でも同じ。でも、「大丈夫」と思って、すべきことをせず、子どもが亡くなったら、あなたはどんな気持ちになるか想像してください。社会的責任も問われかねません。

目次
・新入園児の預け始めはゼロ歳児と同じ(新規)
・緊急時の訓練を。異動はもっと早く発表を!(加筆)
・NEW! 部屋を暗くしすぎないで(新規)
・「チェック時にうつぶせ寝をひっくり返す」ではない(新規)
・睡眠チェック表の簡素化を
・保護者に渡す注意喚起の手紙
・健康情報等を収集・記録するための様式
・発生後の対応
・助成金による「モニター」を使用しない場合のお手紙
・厚生労働省が出しているSIDS予防のためのページ
・内閣府の安全ガイドライン
 (飛ばし読みを想定していないので、項目にリンクを貼っていません)


新入園児の預け始めはゼロ歳児と同じ

 睡眠中、0歳児クラスの子どもはあおむけ寝にし、うつぶせ寝はさせない。これはかなり徹底してきたと思います。問題は1歳、2歳クラスの新入園児。在園児と新入園児が混在するため、すでに1~2年過ごしている子どもたちと同じ感覚で新入園児をみてしまいがち。そして、「1歳クラスなのだから、自分で寝返りが打ててあたりまえ」とも。ですが…。

 2017年に出た研究結果(※)によると、2008~2012年に保育園で睡眠中に死亡した1・2歳児(これはクラスではなく年齢)の76.5%はうつぶせ、残りは不明で、明らかなあおむけはいませんでした(0歳児ではあおむけが11.8%、うつぶせが53.0%。横向きが2.9%)。1・2歳児であっても、「自分で上を向くだろう」ではないのです。また、0歳児の保育園における死亡発生率は全国の発生率の35~55%であるのに対し、1・2歳児の発生率は全国の発生率の1.25~2.45倍。1・2歳児は保育園の睡眠中で亡くなる確率が高いことがわかります。

 睡眠中の突然死が起こる背景には、なんらかの原因(脆弱性)があると考えられています(3-2)。それは横においても、1歳児、2歳児の預け始めはストレスが非常に大きいと誰にでもわかるはずです。もちろん、0歳児も保護者から離れればストレスを感じますし、脳の構造もまだ未発達で異常な状態になりやすい。さらに、1歳児、2歳児はアタッチメントも成立しているはず。ある日突然、知らない人たちの中に「おいていかれた」としたら? この急性ストレスはからだに直接、悪影響を及ぼします(たとえば、ただ「泣く」だけでも…。3-1の7)。

 精神的にも強いストレスにさらされ、からだの中でいろいろなバランスが崩れている時に、異常が発生しやすいうつぶせ寝にして寝かされたら? ですから、1)預け始めの子どもは寝ないのが当然と考え、むりに寝かさない3-1の6。※※)、2)新入園児の預け始めは、1歳クラスでも2歳クラスでも(以上児クラスも)在園児と分けて保育者に近い側に寝かせ、0歳児クラスと同じ頻度で睡眠チェックをする。

 3-1にも保育の安全シート(※※※)にもありますが、睡眠チェックは「生きているか死んでいるかチェック」や「呼吸チェック」ではありません。一人ひとりの子どもの「いつも」をさわって聞いて見て学ぶ「健康チェック」です。0歳児や新入園児は「いつも」がわからない子どもたちですから、ていねいに一人ひとりの様子を学ぶ時間として役立ててください。(2019年2月2日)

※「安全で安心な保育環境の構築に向けて」小保内他、日本小児科学会雑誌、第121巻第7号。

※※床面積基準には、子どもの人数に加えてホール等も必須として入れるべきです。ワンフロアの保育施設等では、「他の子どもが起きてしまう」という不安のために「子どもをむりにでも寝かそう」という行動が起こりやすいからです。

※※※安全シートの1-2の5、「うつぶせでぐっすり寝ていると見える姿こそ、SIDSのリスクそのもの」とあるのは、「3-2. SIDSについて:米国国立衛生研究所の情報」の冒頭をお読みください。

緊急時の訓練を。異動はもっと早く発表を!

 「0.緊急事態時の訓練用動画」「保育の安全シート」の2を使い、訓練をしてください。わざわざ計画をして、1時間も2時間もかけて訓練する必要はありません。保育室内、廊下、トイレの中など…、人形を置いて「〇〇ちゃんが息をしていない!」「〇〇ちゃんが動かない!」…、1回あたりほんの数分で終わります。訓練用動画のページに書いてありますが、こまめに何度でも訓練を。「ここなら、声を出せば部屋に聞こえるはず」…、実際にやってみないとわかりません。

 この訓練は3月のうちに、来年度のクラス担任ですることが不可欠です。「異動が月末にならないとわからない」…。4月1日に園長もクラスも「はじめまして」では、子どもの命は守れません。預け始めの時期がもっともリスクが高いのですから。公立でも民間でも保育者の異動を早く発表してください(遅くとも3月10日頃まで)。そして、次年度の園長、職員が集まって、せめてクラス単位で打ち合わせや訓練をしましょう。自治体、法人、企業はそのような時間を持てるよう保障し、保育者が積極的に取り組めるよう声をかけてください。子どもの命を守り、職員の心と仕事を守るためです。

部屋を暗くしすぎないで

 遮光カーテンを閉め、室内を真っ暗にしている園がまだまだあります。これでは、睡眠チェック時の「見る」ができませんし、先生たちの足元も危険です。その暗さで連絡帳を書いていたら、目も悪くなります! 子どもの表情が遠目からも見えるぐらいの明るさにしてください(カーテンをするなら、薄いカーテン1枚程度)。部屋が北向きだったりすると、カーテンをしていなくても薄暗く、顔が見えにくい場合もあります。「顔がしっかり見えるように」と、電気ランタンを持って睡眠チェックをしている園もあります。

 午睡は「昼寝」であって、夜の睡眠ではないという原則をお忘れなく。(2019年2月10日)

「チェック時にうつぶせ寝をひっくり返す」ではない

 まだ勘違いなさっている先生方が多いのですが、睡眠チェックは「あおむけで寝ていても、異常な状態になる子どもがいるから」するものです。睡眠チェックの時に、うつぶせの子どもをあおむけに返す、ではありません。あおむけ寝を徹底している園の先生たちは、「ゼロ歳児をあおむけにし続けていれば、2か月であおむけ寝するようになる」とおっしゃいます。「この子はうつぶせじゃないと寝ないから」とうつぶせにさせたり、あおむけにさせたりしているから、いつまで経ってもあおむけで寝るようにならないのです。上に書いた通り、睡眠チェックは子どもの健康チェック、「いつもの様子チェック」「いつもと違うチェック」ですから、「今日の睡眠チェック係」をおいて、その先生は連絡帳も製作もナシ。うつぶせになりそうな子どもをあおむけにし、睡眠チェックを続けてください。うつぶせになってしまった子どもを上に向けるのは難しいですけれども、うつぶせになりそうなところ、ならば、ずっと容易です。

 もちろん、春に入園して秋になっても、まだあおむけで寝ないという子どももいます。聞けば、こういったお子さんは「さわるだけで泣き出す」「ふとんにしがみついている」など、別のなにかがあるようです。そんな時には、睡眠中の様子をビデオに撮って、自治体の療育担当者等に見せてください。それでなにかにつながるとは思いませんが、少なくとも「この子を私たちはうつぶせのままにはしておかなかった」という証拠にはなります。そして、こういうことがあるからこそ、「コミュニケーション」のA-3に書いた通り、最低限、0歳児クラス、1歳児クラスにはビデオをつけておくべきなのです。

 「あおむけにすると目を覚ましてしまう」「泣いてしまう」…、ならば無理に眠らせないでください! 「早く寝てくれないと作業ができない」…、子どもの命と先生たちの心、仕事のほうが、連絡帳や製作、行事よりもずっとずっと大事です(←比較すること自体がおかしいですよね)。「連絡帳をじょうずにたくさん書かないと」「劇の道具をちゃんと作らなきゃ」「壁装飾しなくちゃ」…、「保護者の最善の利益や、職員の『仕事したぞ感』よりも、子どもの最善の利益」を優先しましょう。(2019年2月5日)

睡眠チェック表の簡素化を

 下の「発生時の対応」にある大阪市淀川区の死亡では、「本児に関する事故当日の午睡チェックの記載は、その都度チェックしたものではなく、119 番通報後、保育士の指示で、保育従事者が事後的にまとめて記載したものである」(15ページ)となっています。このような「後付け」(おそらくは嘘)のチェック表記載は、一人ひとりを記載、からだの向きまでいちいち記載するチェック表の場合、日常的に発生していると考えられます。「3-1. 睡眠中の安全」にある通り、人間は特に安全や健康に関して「めんどくさいこと」はしません。「悪いことが起きるはずはない」という楽観バイアスがもともとあるからです。

 今からでも遅くはありません。自治体は睡眠チェック表を簡素化してください(3-1に簡素案があります)。自治体にこの問題を提起して、簡素化を要求してください。「記録ではなく、実質」にしなければ、子どもの命は守れません。

 そして、睡眠チェック表をごちゃごちゃ書く手間を考えるぐらいなら、ぜひ、最低でも0歳と1歳の部屋にビデオカメラを設置してください。この点については、コミュニケーションのA-3に書いてあります。

保護者に渡す注意喚起の手紙

 掛札が委員長を拝命していた千葉県の死亡事故検証委員会で2018年3月9日、検証報告書(提言)を出しましたが、それに合わせ、「保育中のお子さまの健康を守るために」(保護者向け)と、「保育中の子どもたちの健康と命を守るために」(すべての保育施設向け)を作り、公表しました。お役立てください。

 NHKのこの記事(2018年2月19日)も、入園説明会や入園面談などに活用できると思います。

健康情報等を収集・記録するための様式

 上の千葉県の検証委員会では、検証報告書(提言)と合わせて、子どもの健康情報等を収集・記録するための様式も作りました(リンクしてあるページの下のほうにPDFとワードでファイルを置いてあります。検証報告書の中にも掲載されています)。一時預かりのお子さんで、くわしい健康情報がわからない、聞けないという場合に使える「簡易版」も作りましたので、お役立てください。

発生後の対応

 子どもの反応(意識、呼吸)がなく、搬送した後は、子どもが回復しない限り、「現場(現状)の保存」をしてください。千葉県の死亡事故検証委員会の「検証報告書」の「提言3」(2018年3月。33ページ)をお読みください。

 2016年4月4日、大阪府大阪市淀川区の認可外施設で起きた睡眠中の死亡に関する検証報告書も2017年7月に出ています。こちらは、子どもの異常に気づいてから119番通報するまでに20分の間隔があいていました。

(発生後の対応のため、内閣府のガイドライン「事故発生時の対応」と合わせて、『保育現場の「深刻事故」対応ハンドブック』を園でご活用ください。

助成金による「モニター」を使用しない場合のお手紙

 厚生労働省が助成金を提供するという睡眠中のモニター、センサーについて、「導入を見送りたいのだが、導入しないことで『この園は睡眠の安全確保に取り組んでいない』と思われないだろうか」というご相談をいただきました。なので、この手紙を作りました。同じようなお立場の園の方たちは、日本SIDS・乳幼児突然死予防学会の意見書、さらに、厚生労働省のリーフレットと合わせて0歳児、1歳児の保護者の方にお配りしてはいかがでしょうか。

 実際、この手紙に書いた内容以外にも、今後モニターやセンサーのリコールが出た場合(出ないわけがないと思います)に補助金の扱いはどうなるのか、耐用年数後やメンテナンスの問題、モニターやセンサーを使っていたのに子どもが睡眠中に亡くなった場合のことなども懸念材料なのですが、この手紙にはそこまで書いていません。

 この手紙では必ず、自園の具体的な睡眠チェックの方法を書いてください。そして、「5分ごと」「10分ごと」と書いたら、必ずタイマーを使って時間を測ってチェックをしましょう(こちらの3「睡眠チェックの方法」)。頭で「5分ごと」「10分ごと」と思っていても、他の作業をしていたらすぐ20分、30分、経ってしまいます。片手間にするぐらいなら、「今日の睡眠チェック係」を決めて、その人は連絡帳も製作もナシとするのが一番です。

 助成金を使ってモニターをお使いになる園の方も、安心はできません。保護者の中には「機械まかせにしているのではないか」と懸念している人もいるでしょうし、モニターを使っていてお子さんが亡くなったら? 使うのであれば「モニターを使う」旨とその理由を明確にし、「私たちは機械まかせにしません」という説明をしたほうがよいのではないかと思います。その旨の手紙のひな型…? モニターの有効性を示すデータがない以上、「助成金が出ているから」という以上の導入理由は各園、各法人によって違うと思います。長年、モニターと睡眠チェックをしっかり並行しておいでになった園もありますし…。新しく導入する園は、ご自身たちの導入理由をお書きください。

 ちなみに、睡眠時のモニターについては、すでに2016年からこちらのページで指摘しています。偽陰性(動かない、生きていないのにアラームが鳴らない)がどれくらいあるのかは報告がまったくありませんが、機械ですから偽陰性がないはずはありません(生きているのにアラームが鳴る「偽陽性」はたくさん報告がありますし)。器具には「これで死亡が予防できるわけではない」という内容が必ず書いてありますから、「使っていたのに亡くなってしまった」とメーカーを訴えることはそもそもできないのです。「使うな」と言っているわけではありません。「あくまでも人間によるチェックが基本」です。

厚生労働省が出しているSIDS予防のためのページ

 厚生労働省のSIDS予防の啓発ページはこちらです(2017年)。一番下に、保護者啓発用のリーフレットも置いてあります。このページの「よくある質問」に、「赤ちゃんが睡眠中に寝返りをして、うつぶせ寝の姿勢になった場合は、赤ちゃんを再びあおむけ寝の姿勢に戻す必要がありますか?」とあり、回答がされていますが、これはあくまでも家庭の話です。保育施設では、下の通りです。

内閣府の安全ガイドライン

 『教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン』【事故防止のための取組み】施設・事業者向け、こちらの1ページに「医学的な理由で医師からうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、 乳児の顔が見える仰向けに寝かせることが重要」と書かれています。


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