6 附 (1) ヒスタミン食中毒事例(過去のニュースから)

 保存・流通時の低温管理が不十分な結果、アレルギー症状の原因となる化学物質ヒスタミンが食材(特に魚とその加工品)中に増え、それを食べた人に起こるものです。ヒスタミンは、加熱等の調理では分解されません。
 食事由来なので「食中毒」と呼ばれるものの、症状はアレルギー、けれども食物アレルギーがない人にも発症します。園で食材を長期にわたって保存しない限り、原因は魚の水揚げから下処理、納品までの過程にあるはずで、園を責めるべき話ではありません。
札幌市サイトのわかりやすい解説
厚生労働省の解説

▶奈良県奈良市の4つの市立こども園と保育園で2023年6月13日、給食でサバの塩焼きを食べた園児43人が口や背中などに発疹の症状が出た(2人が受診)。4園に保存されていた調理済のサバからヒスタミンが検出されたため、保健所はヒスタミン食中毒と断定し、サバを納入した業者と4園に対し、衛生管理と食材の温度管理を徹底するよう指導した。4園では今週いっぱい、自主的に給食を取りやめているという。〔掛札コメント〕ヒスタミンは納品から提供までの短時間に増えるようなものではなく、それも4園で出ているのですから、製造過程または流通過程の温度管理ミスであることは疑う余地がありません。にもかかわらず、園に指導するというのは、保健所が科学を理解していない事実を露呈しているようなもの。

▶長野県上田市の保育園で2022年9月7日、ブリの照り焼きを食べた園児5人にヒスタミン食中毒の症状が出た。給食で提供したブリの照り焼きを食べた複数の園児が顔面が赤くなり、発疹の症状があらわれ、医療機関を受診したもので、この給食を食べた76人のうち10歳未満の男女5人の園児に症状が出て、3人が医療機関を受診した。検査したところ、提供した残品などからヒスタミンが検出され、食中毒と断定、県はこの保育園に対し、12日と13日の2日間、給食の供給の停止を命じた。〔掛札コメント〕ヒスタミン食中毒は、園が長時間、室温に置くなどしていない限り、園の責任ではなく、納品業者やその前の加工業者の責任なんですが…。

▶東京都武蔵村山市の保育園で2021年9月29日、ヒスタミン食中毒が発生し、園児17人に発疹や顔面が赤くなるなどの症状が出た。園内で作られた給食を食べており、保健所は、給食に含まれていたサンマの梅みそ焼きが原因としている。都は、園に10月5日から4日間の給食の供給停止の処分を行った。〔掛札コメント〕サンマの納品が当日であったなら(ほぼそうではないかと)、それは園の責任ではありません。

▶滋賀県大津市の民間保育施設で2020年5月29日、給食を食べた1~2歳児15人が全身のかゆみや発疹などを訴え、9人が救急搬送された。食材のサバからヒスタミンが検出され、保健所は食中毒と断定、同日から2日間の給食提供禁止処分とした。園児らは全員軽症。園児や職員計30人が園内の調理施設で調理されたサバのカレー焼きなどを食べた。〔掛札コメント〕上と同じコメントです。

▶2020年3月17日、熊本県熊本市内の福祉施設で、昼食に出されたサバのオーブン焼きが原因のヒスタミン食中毒が発生、利用者と職員の計30人が症状を訴えた。症状は軽く、全員回復している。同保健所は、施設の調理や納入業者の記録などから「調理と管理の方法は適切だった」と判断。施設と業者名は公表せず、処分や指導もしない方針。〔掛札コメント〕これが保健所の適切な対応であり、適切な報道のしかたです。

▶宮城県仙台市のこども園で2019年11月26日、給食後に園児146人中15人がじんましんなどの症状を示し、医療機関を受診した。ブリの甘酒味噌焼きから、ヒスタミンが検出された。

▶2019年8月30日、沖縄県浦添市の共同調理場が市内10の小中学校に提供した給食(約8000食)で、シイラのフライを食べた生徒ら50人余りが、唇や舌のしびれを訴えていたことがわかった。不適切な温度管理によるヒスタミン食中毒の可能性が高いとみられる。生徒から「シイラを食べた後、舌がピリピリした」との訴えがあり、中学校が調理場に連絡。調査したところ、児童生徒50人、教職員2人の計52人から同様の症状が確認された。〔掛札コメント〕「舌がピリピリ」というのは、食べた時の典型的な感覚のようです。乳幼児はあまり訴えられないと思いますが。

▶鹿児島県鹿児島市内の保育園で作られた給食、弁当を食べたこの園と他の1園、さらに企業1か所で2019年8月19日、集団食中毒が発生した。園児と職員合わせて19人が顔の紅潮や体のかゆみを訴えたもので、サバに含まれていたヒスタミンが原因のアレルギー様食中毒とみられる。

▶2019年6月19日、宮崎県日南市の保育園の保育士が、じんましんのようなアレルギー症状で受診。他の園児や職員も下痢などの症状を訴えた。保健所が調べたところ、給食で提供された魚のシイラの揚げ物と調理前の生の切り身からヒスタミンが検出された。シイラを食べたのは0歳児から63歳までの226人で、このうち52人が食中毒の症状を訴えていた。

▶山梨県富士河口湖町の町立保育所6か所で2018年9月27日、園児と職員がアレルギー症状を訴えた問題で、29日、給食に出たマグロから高濃度のヒスタミンを検出された。発症者は当初より13人増えて92人。マグロは同じ仕入れ先から冷凍状態で納品された。鮮度が落ちたり、常温で放置したりするとヒスタミンが生成されることから、県は納入までの管理に問題があったとみて調べる。

▶大分県中津市の認定こども園で2018年8月31日、サバの塩焼きを食べた計80人のうち、1~4歳の幼児33人と保育士3人の計36人が発疹などの症状を訴え、塩焼きからヒスタミンが検出された。サバは同日午前9時すぎに市内の鮮魚店から仕入れ、園内で調理した。

▶福岡県筑紫野市は2018年6月21日、園児計31人が給食後に発疹の症状を訴え、市内3保育所の給食に使われたイワシのすり身から高濃度のヒスタミンが検出されたと発表した。すり身はいずれも同じ製造業者だった。

▶山形県寒河江市の市立保育所で2017年12月20日に給食を食べた園児20人と職員2人の計22人が、発疹などの食中毒症状を訴えた。保育所で調理したブリの照り焼きから、ヒスタミンが検出された。

▶福島県下郷町の小中学校2校の給食で、消費期限後約5か月を過ぎたサンマのすり身を食べた児童生徒、教員の計87人が食中毒。会津若松市の魚介類販売業者が2015年8月27日、岩手県の加工業者からすり身を仕入れた。8月29日が消費期限だったが、28日に一部の表示ラベルをはがして冷凍保存、2016年1月19日に下郷町の食品販売業者に出荷し、21日に学校給食に提供された。〔掛札コメント〕加工品では、このような事例も起こるわけです。

▶埼玉県久喜市の民間保育園で、ヒスタミンによる食中毒が発生。2015年9月17日、園児18人と保育士ら16人が給食のサンマの一夜干しを食べたところ、約5分後から1、2歳児の14人と職員9人が口のまわりの発疹やかゆみなどを訴えた。午後4時ごろ、園長が保健所に連絡、調査した結果、保存されていたサンマの一夜干しなどからヒスタミンが検出された。

▶北海道旭川市内の民間保育園で、給食を食べた園児17人がアレルギーに似た症状を起こすヒスタミンによる食中毒にかかったと、市保健所が2015年8月6日発表。

▶埼玉県草加市の民間保育園で2014年3月24日、給食を食べた園児らがアレルギー性食中毒を発症。イワシのつみれ汁を食べた70人中、0~3歳の20人と職員2人が食後10~20分で赤みやかゆみを訴えたもの。高濃度のヒスタミン物質がイワシのすり身などから検出された。県は食品衛生法に基づき、同園に27日から2日間の給食停止処分を下した。〔掛札コメント〕これは納品までの過程が長いつみれですから、どう考えても園の責任ではありません。

▶東京都清瀬市内の7保育園で2013年9月19日、計92人の園児が赤みや発疹などの症状を示した。給食に出たイワシのつみれからヒスタミンが検出された。材料のイワシのすり身は市内の水産会社から仕入れた。